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めいでんさんぶる 1.前奏曲メイド研修生茉莉

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私は私服と下着をタンスに入れ、トイレとセットの洗面所に歯ブラシやタオルを置き、本やレターセットや学校の友達と撮った写真立てをベッドに側の机に置いた。
最後に目覚まし時計を出して、
「明日は何時に起きたらいいんですか?」
「7時かな。……でもキッチンメイドでもある茉莉ちゃんは仕込みもあるから6時起きね」
「分かりました」
早起きは学校生活で慣れている。
「はい、これ」
目覚まし時計をセットし終えるととめさんが小瓶を差し出した。
とりあえず受け取って見てみると滋養強化とかタウリンとか書いてある。いつだったかファイト一発とか言ってる男の人が二人映っているCMのあの茶色の瓶だ。
「これ……栄養ドリンクですか」
「そ、結構効くよ」
そう言うととめさんは自分用の小瓶を開けてくいっといった。
実家のお父さんが連日残業の日に飲んでいたのを見た事があるけど17歳でこのドリンクにお世話になるなんて思いもしなかったな。
私も乙女だからこんなドリンクには少し抵抗があるのだけれど。
「私も最初は抵抗あったけど慣れたら大丈夫よ。ネグリジェと同じでね」
「……じゃあ、頂きます」
茶色の小瓶を開けて、どんな味か匂いかも分からないから一気にくいっといった。
……なんだか子供用のシロップの風邪薬みたいな味。美味しいとも不味いとも言えない。
「どお?」
とめさんが顔をのぞき込んできて言う。
「なんだか変な感じです。本当に効果あるんですか?」
「気持ちだけでも疲れ取れるよ。こんだけ滋養とかタウリンとか書いてるとね」
「とりあえずありがとうございました」
「もう一本ここに置いておくから朝か仕事中必要だと思ったら飲んで」
とめさんはベッドの側の机にコトンと未開封の小瓶を置いてくれた。あんまりお世話にはなりたくないけど、気持ちだから。
「じゃあもう寝な。明日からは早いから」
よっこいせと椅子から立ち上がってベッドに横になれと促す。
「はい」
言うとおりになるととめさんは扉の近くの照明のスイッチに手をかけると、
「じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい。……あ、今日は本当に良くしてくださってありがとうございました。これからもよろしくお願いします」
割れた食器の処理から栄養ドリンクまで、本当にお世話になった。明日はお役に立たなくちゃ。
「はいはい」
とめさんは母のように慈悲深い笑みを浮かべて応えると照明を消して扉を閉じた。
隣の部屋に入る音を聴き終えてから月明かりが入ってくる窓に目をやる。
端っこには木の葉の陰。
ふくろうの鳴く声がどこからか聞こえてくる。
そして空には無数の星達が輝いている。中には赤や青に光る星も。
電柱も電線も映らない無垢な星空。
こんな素晴らしい所で眠れるなんてとても素敵だ。
私は星達に見守れながら夢の世界に落ちていくのだった。