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透夏(とうか)
透夏(とうか)
novelistID. 1875
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続・三匹が行く

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「いざ、尋常に勝負!」
(……今回は早かったな。前回からまだ三日も経ってないぜ)
 半ば呆れた様子でそう思いながら、しかしチヒロは楽しそうに背中の剣を抜く。対して目の前の彼も、腰にさしていた剣をすらりと抜いて構えた。
「ふっふっふ、今回の俺は一味違うぜ」
「その台詞聞くの、三回目だな」
「うるさい! 今回こそは違うんだ!!」
 ひょんなことで知り合ってはや半年。
 剣での戦いで負けた事が相当悔しかったのか、彼はあれから何度となくチヒロに勝負を挑んできて、そしてことごとく負けている。 「いくぞ!」
「おう!!」
 今回でちょうど二十回目の戦いになる。
 最初の頃は二人ともかなり真剣に戦っていたのだが、最近ではそれが薄れてきていた。
 チヒロにとっては、昔馴染みの相手と手合わせをしているような気分になることも多々ある。
(普通、十回も叩きのめされれば諦めるだろうに、もう二十回だぜ)
 剣を構え、彼と正面きって対峙しながらチヒロは漠然と思う。
(……よっぽどの馬鹿でもない限りそんなことしないよなー)
 苦笑。それから……
(でも、結構見込みあるよな……)
 淡い笑いを浮かべたチヒロは、向かってきた彼を軽い足取りでひらりとかわした。
 チヒロが避ける事を半ば予測していたのだろう。彼は即座に反転して足払いをかけてくる。
 それも軽々と避けたチヒロは、剣で彼に切りつける。その刃は彼の肩を切り裂くように振り下ろされたが、しかしその時にはすでに彼の身体はそこになかった。
(へえ、中々いい動きするようになったな)
 その機転と対応の速さに感心し、ふと気を抜いたのが間違いだった。
 瞬間、チヒロは彼の姿を見失った。
(しまっ……!?)
 そう思ったときには彼はすでに自分の横に回り込んでいた。
 肩をがっと掴まれ、ふわりという浮遊感と共に身体が傾く。
(やばっ!)
 慌ててチヒロは足を踏み出し、倒れるのを防ごうとする。しかし、相手も容赦がなかった。ここぞとばかりにその足を払い、チヒロの体勢を崩そうとする。
「ちっ!」
 舌打ちと共に、殆ど本能で体が動いていた。
 足払いをすんでの所でかわし、真横に向けて剣を振る。
「っ!!」
 咄嗟の事だったので加減が出来なかった。
 自分のした事にハッと気づいたチヒロが見たものは、血に濡れた自分の剣と、鮮血で染まった彼の左肩。
「!?」
作品名:続・三匹が行く 作家名:透夏(とうか)