三匹が行く
ドンッ
何かが足に当たった。
ふと視線を落としてみると、足元に子供が尻餅をついていた。
べそをかいて今にも泣き出しそうな顔。
五歳くらいだろうか、目には涙をあふれさせ、しかし必死に泣くまいとしている様子が見て取れる。
(うっとおしいな)
そんな思いをあからさまに顔に浮かべて、センリはさっさと立ち去ろうとした。
その時……
スパーン!
後頭部を『何か』で思いきり殴られた。
剣、にしては痛くない。そもそも剣で殴られたりしたら、最低でも気絶くらいはしているはずだ。
棒、にしては音が軽い。木よりももっと軽い……そう、強いて言うなら紙のようなもの。
「ってー……」
(何でいきなり殴られなきゃならないんだ!?)
そんな疑問を抱きつつ、ずきずきと痛む頭を押さえながらセンリはそちらの方を振りかえった。
「…………」
そこに立っていたのは、一人の少年だった。
年下……よくて同い年、十三歳くらいだろう。
一点の曇りも無く澄んだ大きな瞳。さらさらとそよ風になびく茶色の髪。小柄な割には結構しっかりとしている体躯。
少女のように可愛い顔立ちをしているが、居丈高に立っているその体型は、何処をどう見ても男のものだった。
皮製のジャケットを羽織り、背中には一振りの長剣をさしている。
華奢といっても差し支えないほどの細い身体だったが、それは無駄な肉が無いからそう見えるのであって、決して優男とは言えない少年だった。
彼の手には紙を折りたたんだようなもの……確か、東方の武器(?)でハリセンというものだったと思う……が、しっかりと握られていた。
「いきなり何しやがる!?」
抗議の声をあげたセンリを、もう一発スパーンと殴ってから、彼は告げた。
「ごめんなさい、は」
「へ?」
二発も殴られた上に訳のわからない言葉を口にされて、センリは怒るよりも先に唖然とした。
何を言われているのか、その意味が全然分からなかった。
そんなセンリの心境を察したのか、それともそれが彼の地であるのか、少年はセンリの顔を覗き込み、優しく丁寧かつ嫌味まじりの口調で、先ほどの言葉を繰り返す。
「ごめんなさい、は?」
「何で俺が謝らなくちゃならないんだよ!?」
(いきなり一方的に殴ってきやがって! 謝るってんならそっちの方だろう!!)
何かが足に当たった。
ふと視線を落としてみると、足元に子供が尻餅をついていた。
べそをかいて今にも泣き出しそうな顔。
五歳くらいだろうか、目には涙をあふれさせ、しかし必死に泣くまいとしている様子が見て取れる。
(うっとおしいな)
そんな思いをあからさまに顔に浮かべて、センリはさっさと立ち去ろうとした。
その時……
スパーン!
後頭部を『何か』で思いきり殴られた。
剣、にしては痛くない。そもそも剣で殴られたりしたら、最低でも気絶くらいはしているはずだ。
棒、にしては音が軽い。木よりももっと軽い……そう、強いて言うなら紙のようなもの。
「ってー……」
(何でいきなり殴られなきゃならないんだ!?)
そんな疑問を抱きつつ、ずきずきと痛む頭を押さえながらセンリはそちらの方を振りかえった。
「…………」
そこに立っていたのは、一人の少年だった。
年下……よくて同い年、十三歳くらいだろう。
一点の曇りも無く澄んだ大きな瞳。さらさらとそよ風になびく茶色の髪。小柄な割には結構しっかりとしている体躯。
少女のように可愛い顔立ちをしているが、居丈高に立っているその体型は、何処をどう見ても男のものだった。
皮製のジャケットを羽織り、背中には一振りの長剣をさしている。
華奢といっても差し支えないほどの細い身体だったが、それは無駄な肉が無いからそう見えるのであって、決して優男とは言えない少年だった。
彼の手には紙を折りたたんだようなもの……確か、東方の武器(?)でハリセンというものだったと思う……が、しっかりと握られていた。
「いきなり何しやがる!?」
抗議の声をあげたセンリを、もう一発スパーンと殴ってから、彼は告げた。
「ごめんなさい、は」
「へ?」
二発も殴られた上に訳のわからない言葉を口にされて、センリは怒るよりも先に唖然とした。
何を言われているのか、その意味が全然分からなかった。
そんなセンリの心境を察したのか、それともそれが彼の地であるのか、少年はセンリの顔を覗き込み、優しく丁寧かつ嫌味まじりの口調で、先ほどの言葉を繰り返す。
「ごめんなさい、は?」
「何で俺が謝らなくちゃならないんだよ!?」
(いきなり一方的に殴ってきやがって! 謝るってんならそっちの方だろう!!)