彼女と嘘
小さな頃から一緒に過ごしてきたのだ。
それぐらい彼女を見ていれば、わかる。
だから、優斗への想いを、彼と付き合っている事を、まだ芽衣は凛に言えないままでいる。
それがどんなに卑怯な事だとわかっていても。
自分を見つめる優斗の視線に気づき、芽衣が顔を上げれば、彼は笑って、口づけてくれた。
その事を嬉しく思いながらも、芽衣はそっと目を伏せる。
そんな彼女の脳裏に浮かぶのは、大切な幼なじみの姿だった。
……同じものを見て育ち、何をするのも一緒だった。
いつだって一緒に笑っていた。
それがずっと続くのだと信じて疑いもしなかったのに。
……まさか同じ人を好きになるとは思っていなかった。
彼女に隠し事を、嘘を吐くにようになる自分なんて、芽衣は想像もした事がなかった。
今も彼女が芽衣にとって大切な幼なじみである事に変わりはないけれど。
何故だか寂しいと思えて、芽衣は小さく笑った。
END