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初恋

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思春期の女子というものは、どうしてこう「コイバナ」と言う奴がすきなんだろう。
 修学旅行の夜、誰からともなく始まった好きな人の暴露大会を眺めて、ばれない程度のため息をついた。
 私も別に他の子の「コイバナ」を聞くのは嫌いではない。むしろ、友人達の普段の生活では見せない、乙女な表情を垣間見られるのは楽しい。だが、人の話を聞いているだけではすまないのがセオリーで、どんなに気配を殺していても必ず向けられる質問がこれだ。

「で?奈緒は、今好きな人とかいないの?」

 この質問に素直に「いない」と答えたところで無駄なのはわかっている。その場合、返ってくるのは「自分だけ隠そうとして……」か「じゃあ、今度合コンでも……」という話題だ。いないものはいないし、そこまでして出会いを求めたいわけでもない。だから、私はいつも、差し障りのない人の名前を挙げることにしている。

 そのときの条件はまず他の友人とかぶらないこと。これは言うまでもないことだ。次に可もなく不可もない容姿であること。やたら格好良い人だと大概かぶるし、逆に(こういってはなんだが)不細工な人の場合はどこがいいのかと突っ込まれて訊かれる危険がある。そして最後に自分とはあまり接点のない人。接点のある人の場合、おせっかいな子が変に気を回したりして鬱陶しい思いをする羽目になるので、それを回避するためにも重要だ。

 この条件をクリアできそうな人の名前を適当に言って、後は適当に誤魔化していれば話は別の人に移る。これが、この数年で私が学んだ「コイバナ」をスルーするコツだ。今回も何とかそれで乗り切り、話は私の隣にいた沙紀に移った。

「じゃあ、沙紀は?」

 友人の問いに沙紀は苦笑を浮かべ答えた。

「私は、つい最近失恋したばっかりだから」

 その答えに周りの友人達は一瞬しまったという顔をした後、あまり触れないようにしながら話題を変えていった。私は何故かその答えが彼女の方便だと信じて疑わず、ああ、こんなかわし方もあったかとぼんやりと感心していた。

 それまで沙紀とはクラスの友人としての交流はあったが、2人で話すことはあまりなかったから、このとき初めてちょっと2人だけで話してみたいと思った。
 そして、そのチャンスは修学旅行最終日に訪れた。

作品名:初恋 作家名:新参者