黄金の里
「わしは刀を作るのを断って、手打ちにされてしまったんじゃ。村はずれに捨てられたが、運良く急所が外れていてな、虫の息で生きていたんじゃ」
「たまたまわたしたちが通りかかって、おじいさんを私たちの里に連れて行ったのです」
どうどうとした若者が言いました。
「この人達は隠れ里の人たちでな。ときどきこちらに出てきては、苦しんでいる人を助けてくれるんじゃよ」
その人たちは、ずっと昔、戦を逃れて山奥に入り、そこに平和な村をきずいた人たちの子孫なのです。
「わたしたちも山をさ迷っているとき、この方達に助けて頂いたのです」
母親が言いました。
「伊作よ。これからおまえは忙しくなるぞ。今までの罪滅ぼしに、その手で鍬や鋤を作るんじゃ」
じいちゃんは伊作の手に上等の玉鋼を握らせました。
隠れ里の人たちが持ってきた袋には、たくさんの種籾や、あわやヒエ、黍にそば……。あらゆる穀物の種が入っていました。
「さあ、この土地を黄金の里に生まれかわらせるんじゃ」
じいちゃんのことばに、大きくうなずいた伊作は、涙を拭うと力いっぱい槌を振り下ろしました。
その顔は希望に輝いていました。