第三音楽室の秘密
しかし、おれの気遣いも虚しく、その男は遠慮なくドアを蹴り倒した。(あーあー、また生徒会から文句言われるぞ……。)
「おい、茨木! 掃除は終わったのか!? おい、なんでこのドアは閉まってたんだ――……ってお前それ…………」
通称『おいおい男』と呼ばれる久留米生徒指導部長。巨漢で無駄にマッチョだが、そんな彼をも黙らせるほど、俺の持っているこの文章はレアなものだったらしい。
おいおい男に助けられた俺は、すぐに職員室へ連れてこられた。名前も知らない先生が、「気が落ち着くように」とコーヒーをいれてくれた。
「やっぱり第三音楽室の掃除なんかさせなきゃよかったかもねえ。でも、ちょっとは反省したんじゃない?」
先生に何を言われても、何とも思わない。だって、俺のしたことは別に悪いことでも何でもないからだ。
「俺には何も後ろ暗いことはないので、反省することもありませんが」
「……そう。まあ、何事もなくてよかった。ただでさえあそこは……」
「何かあったんですか?」
尋ねると、先生は瞬時に表情を変えて、「その話はまた今度ね」と早々に会話を打ち切った。
俺は、そう遠くない日に知ることになる。十年前に何があったのか。『私』が何をしたのか――そして、
この学校が何を隠しているのかを。