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ラベンダー
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魔術師 浅野俊介9

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「天使は人間と違って生体がありません。だから本来なら生体が持つ者だけにある欲情というのは起こらないはずなんです。…でも私はそれを起こしてしまった…」
「……」
「それで天から堕とされました。お許しください。…それからは決してそんなことはしていませんから安心して下さい。」
「リュミエル…」

圭一が涙を堪えながら言った。

「リュミエルが僕の守護天使にならなかったら…リュミエルはまだ天使だったかもしれない…」
「!!マスター…」
「…僕が…もっと…しっかりしてたら…」

リュミエルが思わず圭一を抱きしめた。

「そんなこと…言わないで下さい…私が勝手に…」

圭一が涙を流しながら言った。

「僕にとっては…リュミエルは天使だよ。」

リュミエルの目から涙が零れ落ちた。その瞬間消えた。

「!?リュミエル!」

圭一はしばらく独りでぼんやりとした。

……

翌朝-

リビングのソファーで寝ていた浅野は、香ばしい匂いに目を覚ました。
キャトルが胸の上で丸くなって寝ている。
浅野は思わずキャトルの体を撫でながら、頭だけを上げて、カウンターキッチンを見た。

誰かが、キッチンで何かを焼いている。

「圭一君…もう大丈夫なのか?」

浅野がそう言うと、圭一が顔を見せた。

「起こしちゃいましたか?すいません。」
「いや…。」

浅野は目をこすりながら言った。

「いい匂いだな…。何焼いてるの?」
「魔王の目玉焼き。」

浅野は飛び起きた。キャトルが「ギャッ」と言って落ちた。

「わー!ごめん!キャトル!!」

浅野が慌ててキャトルを抱き上げ、体を撫でた。
圭一が笑った。

「悪趣味だなぁ…。リュミエルは?」
「魔界へ帰りましたよ。」
「そうか…」

浅野はキャトルをソファーに置いて立ち上がった。

「あー…なんか、いろいろありすぎて、日にちの感覚がおかしくなってるな…」
「今夜はバーに出て下さいよ。社長達には、浅野さんが高熱を出したことになっていますから、話を合わせておいて下さいね。」
「わかった。」

浅野はキッチンに入って、圭一の背中から、フライパンを覗き込んだ。
そして、焼いているウィンナーを素手でつまみ、口の中に放りこんだ。

「!!!浅野さんっ!行儀悪い!!」
「こういうのが一番うまいんじゃないか。」

浅野が口をもぐもぐさせながら、にやりと笑って言った。

「リュミエルがこういうの食べられたら、嬉しいだろうなぁ…」
「!…」
「圭一君の手料理…むふふ…」
「なんですか、その「むふふ」って。」
「むふふはむふふ」

圭一が苦笑しながら、火を消した。

「…でも…悪魔は人間には生まれ変われないんだよな…」
「!!え?」

圭一は驚いて浅野に向いた。

「どうして!?」
「…わからない。でもそれが罪の償いの1つなんだと思う。」
「……」

圭一は下を向いた。

「将来、圭一君とリュミエルが生まれ変わって夫婦になるってのが一番のハッピーエンドなんだけど…それは無理そうだな…」
「どうしても…リュミエルは天使にはなれないんですか?」
「ん…神様の恩赦を受けるには、上級天使の協力がどうしてもいるらしいんだ。…まずそれは無理だしな…。」
「……」

浅野は圭一を見た。圭一の目から涙がこぼれ落ちている。

「あーー!泣くなっ!!君が泣いてしまったら…」

突然、リュミエルが現れた。

「…こうなるんだよ…」

浅野が目に手を当てて言った。
リュミエルが言った。

「…マスターを泣かすな!」
「はい、ごめんなさい。」

浅野は抵抗せずに謝った。

「リュミエルー…」

圭一がリュミエルに抱きついた。

「浅野さんがいじめるんだ。もっと怒って。」
「仰せの通りに。」
「なっ!!俺は何も…!」

リュミエルが圭一に抱きつかれたまま指を浅野に向け、はじくように動かした。浅野の姿が一瞬キッチンから消え、ソファーに突き飛ばされたようになった。
キャトルが間一髪でソファーから飛び降りた。

「ぎゃははは!こそばいって!!」

浅野がいきなり身をよじって笑いだした。浅野の体の周りに小さなインプ(悪魔の子ども)達が現れ、浅野の体のあちこちを持っている槍でつついている。

「ばかっ!やめろ!脇の下が一番弱いんだって…言っちゃったよ、俺ってばかだ!」

そう笑いながら言い、浅野は「やめろー」と言いながら笑い転げている。
それを見て、圭一が手を叩いて笑った。

キャトルがソファーの横のテーブルに、箱座りしてため息をついた。
リュミエルは苦笑しながら、そんな浅野を見ている。

この幸せな時間はいつまで続くのかな…と、笑い転げながら浅野は思っていた。

(終)
作品名:魔術師 浅野俊介9 作家名:ラベンダー