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しん よしひさ
しん よしひさ
novelistID. 17130
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たかが映画、されど映画

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東京物語

 1953年

監督 : 小津安二郎
出演 : 笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子
脚本 : 小津安二郎 , 野田高梧

 小津の名を今に高めている名作。
そして黒澤の『七人の侍』とともに日本映画の黎明期の傑作として指折りな作品でもあります。
食卓を囲むローポジションからのカメラ・アングルも確立し、カメラを一箇所に据えその前を演者が行き来する独特の作風も、これ以降現在まで、追従者のみならず広範な演出・カメラマンに影響を与えた作品でもあります。
 昭和28年という戦後の復興期の中でも人々に残る傷跡が、笠智衆・東山千栄子の、亡き息子の影を見る老夫婦の演技にとても良く表され、華やかな都会としての東京、歓楽街としての熱海の描写を色あせた空しさにしてしまいます。
戦中戦後を生きぬいた彼らの子供達にも敗戦の傷は、親の死より物欲、その事に悪びれることもしない程深く達しています。
尽くし尽くした国は何も応えず、それでも親が必死に守り通した子等は、世情に流され今や何一つ届かない。
傍に居るのは戦争で亡くなった息子の遺影と、意外にもその嫁。
「実の子より、いわば他人のあんたの方がとても良くしてくれた」
笠智衆のこの言葉は家族の崩壊の現実を語り、そんな中でも人の心情を信じたい小津の切なさが滲んでいます。
この時から60年近く経った現代、社会の多数を占めつつある老夫婦の嘆きは、この作品当時と何一つ変わらず、巷に溢れています。
それはこれからも増え続けていくのでしょう。
だからこそ、「東京物語」はこれからも観続けられ、私たちの嘆きは、「良くしてくれる」原を求めるのです。