参加コミュ「短編家企画」作品集
あれから、数日。
右肩の傷も多少癒えた。
けれど、心の傷は癒える事はないだろう。
僕は何時もの教会を訪れ懺悔した。
全て終わった。
教会を後にしようとした時、牧師が近付いて来て
「これを、お受け取り下さい」
そう言って手渡してくれたのは…一足のトレッキングシューズ。
「これは、誰から」
「貴方のお兄様からです。すまなかったと一言添えてくれともおっしゃっていました」
…僕がこの教会に訪れて居た事を兄は知っていた。
そして、あの言葉の意味「前を向け」
今更気付く。
僕がこの街を出る事も知っていたのだろうか…
双子の兄。同じ顔。この街にはもう…
兄に貰った靴にはきかえ、愛するこの街を僕は後にする。
振り向く事なく…
前を向いて。
短編家企画『靴』
コミュの第三弾です。
作品名:参加コミュ「短編家企画」作品集 作家名:槐妖