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「・・・」
瑠萎は、相変わらずムスッとしていた。

―昼食の時間―
生徒達が自由に話している。
「遅れてやってきた新入生、白銀 燐か――」
燐は男子達とすっかり馴染んで、なにやら話している。
「なんかさー、ドラマみたいだねっ」
「今までいろんな国にいたらしくて、何ヶ国語もペラペラらしいよ」
「さっすが愛生、情報通!!」
瑠萎と一緒に昼食を食べている女子三人は、燐の話で盛り上がっている。
「でも、なんか白銀君って不思議だよね」
「うんうん。白髪に紅目って・・・・」
「ハーフかなんかなんじゃない?」
「肌も白いしね」
「イヤリングとかつけてるし」
「ホントだ。オッシャレ~」

その頃、瑠萎は・・・
―――絶対アイツがあの時の犯人に違いないんだ・・・・
まだ、あの事件の事を考えていた。
―――それにしても・・・アイツ・・・・
「――・・・・ぃ・・・・・・瑠萎!」
「!!」
自分の名前を呼ぶ声に、はっと我に返る。
「どーしたの?ボーっとして・・・。瑠萎、今日なんか変だよ?大丈夫?」
「ははっ、大丈夫大丈夫!」
苦笑いになりながらも答える。
瑠萎はサッと片付けをして、どこかへ行ってしまった。
「・・・・変なの」
愛生がボソリと呟く。
その一連の様子を、燐は遠くから視線だけを移して見ていた。

  ◇

学校も終わり、瑠萎はあの事件があった公園に来ていた。
―――犯人は現場に戻るという・・・・。ここで奴を張ってみるか
瑠萎は近くにあったベンチに腰掛けた。
―――それにしても、証拠が一つもないってどういう事なんだろう
―――そして、あの青い炎はなんだったんだろ?青い炎は赤い炎よりも高温で、ガスや化学物質でも使わない限り、あそこまでハッキリと出ないんじゃなかったっけ?
瑠萎は、周りの音も聞こえないほど考え込んでいる。

「背中がガラ空きですよ」
「!!!」
突然聞こえた声に振り返る。
そこには燐が立っていた。
「お、お前っ!?!普通に出てこれないのか!?」
「播磨さんもこっちが帰りなんですか?偶然ですね」
燐は、相変わらず無表情だ。
「人の話を聞け!」
勢い余って大きな声が出たが、幸い二人以外に人はおらず、変な目で見られるなんて事はなかった。
「播磨さんって、少し男っぽいんですね。話し方とか・・・」
そう言う燐からは表情も変わらないが、声音からも考えていることが全くと言っていいほど解らない。
「・・・あぁ、まぁね」
隣にいる不思議な少年に、瑠萎は未だに警戒しているようだ。
「・・・」
少しの間沈黙があったが、瑠萎の方から切り出した。
「なぁ、お前は知っているか?一ヶ月前、ここでホームレスが殺された事」
「えぇ、聞いた事はありますけど・・・」
興味があるのかないのか解らないような返事を返す燐。
それでも、瑠萎は続けて話をする。
「顔がわからなくなるまでボコボコに殴られて、無数の刺し傷があったそうだ。最期は、下半身に生きたまま火をつけられたらしい。犯人もまだわかっていない」
燐は黙って聞いている。
「それでも最初の頃は、凄惨な事件として話題になり、すぐに犯人は捕まるだろうと思われていたけど・・・・。結局は、次々と起こる凶悪事件に流されるように、いつの間にか忘れられ始めている・・・・」
瑠萎は少し俯いている。
「あのホームレスは、誰にも知られずに生きて、誰にも知られずに死んでいった。そして、もう誰もあの事件をを思い出す人もいなくなってしまうんだ・・・」
そこで、今まで黙って聞いていた燐が口を開いた。
「・・・・播磨さんは忘れなきゃいい」
「えっ?」
「世の中のみんなが忘れても、あなたは覚えていればいい・・・。オレは忘れない。どんな事でもずっと・・・」
そう言った燐の眼差しは、寂しそうに、どこか遠くを見つめていた。
「そ・・・そうか・・・・」
―――不思議な事を言う奴だ・・・
―――それにさっき、敬語じゃなかった
ふと、燐が歩き出す。
「それに、そんな連中にこの国の法律は必要ないですよ」
「え!?」
燐が階段の上で立ち止まった。
「そう・・・、本当に悪い奴には――・・」
瑠萎からは、逆光で燐の顔は見えない。
「法では裁けない法で裁く・・・・ってね――・・」
瑠萎が眩しそうに顔をしかめる。
「?なにを・・・言って・・・・」
「・・・・何でもないです。早く捕まるといいですね、犯人」
「そうだな」
言って、瑠萎は微かに笑みを浮かべた。
「やっと、笑ってくれましたね」
「え?」
「は、播磨さんに嫌われていると思ってたので。名前で呼んでくれませんし」
「あ・・・あぁ、ごめん。・・・・そんなつもりじゃ・・・」
瑠萎は少し気まずくなったのか、黙り込んでしまう。
そんな瑠萎の心境を知ってか知らずか、燐の方から別れを告げる。
「・・・それじゃあ、また明日。学校で・・・・」
「あぁ」
―――悪い奴じゃなさそうだな。
―――・・・・でも何か、大切な事をわすれているような・・・・。なんだったかなぁ・・・
そして、二人は別れた。
太陽はもう沈みかけていた―――・・

  ◇

――キーンコーンカーンコーン・・
昼過ぎの学校に、授業終了のチャイムが鳴り響く。
生徒達が帰っていく中、携帯の音が小さく鳴った。
――・・ルル・・プルルルル・・ピッ
「・・・・何だ。・・・・ああ、わかってる。アイツらは今日片付ける。手筈を整えとけ」
電話の持ち主は、影を纏うような雰囲気で淡々と話す。
『・・・りょーかい。・・・・で、女はどうするつもりや?見た所、問題ないように思うけど?』
比べて、電話の相手は明るい話し方だ。
「・・・・別に、どうもこうもねぇよ。今まで通り消すだけだ」

  ◇

日も沈んで、辺りは闇に包まれつつあった。
瑠萎は、またあの公園に来ていた。
―あんな事言われると、なんか来ないといけない気がするんだよね・・・
瑠萎はそんな事を考えながら、昨日の燐の言葉を思い出す。



――――――
「・・・・播磨さんは忘れなきゃいい」
「えっ?」
「世の中のみんなが忘れても、あなたは覚えていればいい・・・。オレは忘れない。どんな事でもずっと・・・」
そう言った燐の眼差しは、寂しそうに、どこか遠くを見つめていた。
「そ・・・そうか・・・・」
――――――



「・・・・忘れなきゃいい、か。・・・私だって、忘れたくない・・けど・・・・」
瑠萎が悲しそうに呟く。
「記憶は新しく塗り替えられていくんだ」
そう言って、ほんのりと闇に染まっていく空を見上げた。
「せめて、いつか記憶が塗り替えられて忘れてしまう・・・その時までは・・・・」

「その時が“今”だとしてもか?」
「!!?」
背後からいきなり聞こえた声に、瑠萎が振り返る。
同時に急に雲行きが怪しくなり、公園の街灯が消える。
一瞬の闇に閉ざされたが、その闇は青い光によって破られる。
瑠萎の視界が再び開ける。
その目に映ったものは―――・・
自分を取り囲むように燃え盛る“青い焔”と
日本刀の切っ先を向けている、狐の面を被った少年だった。

「・・な・・・ぁ・・・・」
見たことのない光景に、瑠萎は静かに震える。
「動くなよ」
少年は冷たく告げる。
その声に比例するように、焔が一際大きくなる。
作品名:FIND OUT 作家名:リンリン