SNOW~残された者~
それでも少女はいつもの気の強さを押し隠し、帰ってきた彼を気遣い、近くの木陰へと足を運ぶ。
その間ももどかしくて仕方なかった。
なのにいざ座り込み、沈黙が訪れると言葉は声にならなかった。
金色の海がざわめく音だけが辺りに響いている。
しばらく沈黙していると、肩に重みを感じた。
青年が背を樹に預け、少女に寄りかかっていた。
眠ってしまったのか、まぶたも閉ざされていた。
(もう、どこにも行かないでよ…)
少女は小さくささやく。
青年はただ幸福そうな笑みを浮かべたまま、深い眠りに身を委ねていた。
(…?)
何かをたたく、硬い音が少女の耳に届いた。
重いまぶたを押し開けると、すでに外は晴れ、夕闇が押し迫ろうとしていた。
少女は自分が夢を見ていたことを知る。
再び硬い音が響く。
少女は立ち上がり音の元へと急ぐ。
(帰ってきたのかな?)
はやる気持ちを抑え少女は外へと通じるドアを開く。
少女はそこに一人の男の姿を見た。
作品名:SNOW~残された者~ 作家名:夢宮架音