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左地臼氏殺害事件

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「しかし、茶番でしたね」
 警察官は、にべもなく言う。
「まあ、計画通りの反応だったがね」
 私は肩をすくめて見せる。警察署までの道中、隣を歩く彼は、私に手錠をかけることすらしなかった。そう、それが正解だ。私は、逃げたりなどしない。
「それにしても、本当、あなたは酔狂な人だ。よくもまあ、あんなに関係者を弄んでくれましたね」
「それが目的だったのだから、当然さ」
 私は、笑う。警察官は笑わずに、ふんと鼻を鳴らした。
「それに、酔狂といえば、君だってそうだろう。警察官の癖に、私の勝手を傍で見ていたではないか」
「まあ、復讐劇というものは、そうそうお目にかかれるものではないですからね……。後学のためと思って、楽しませてもらいましたよ」
「そうかい」
「それにしても、彼ら、あなたが弱男だって、気付くでしょうか」
「まあ、冷静になって一度考えてみたら分かるだろうけどね。でも、あのお人よしたちが冷静になるときなんて来るのかな」
 私の言葉に警察官は、初めて面白そうに笑った。とてつもなく邪悪な笑みではあったが。
 ああ、そういえば。
 探偵事務所の鍵を閉めてくるのを、忘れていたな。
 警察署に入る直前に、私はそんなことを思った。

――『左地臼氏殺害事件』、終劇
作品名:左地臼氏殺害事件 作家名:tei