2+1=1
05
すると突然、泉美の携帯が鳴り響く。この着信音は出版社からだ。
「はい、堀川です」
仕事の日程変更らしく、ばっぐからスケジュール帳を取り出し携帯片手に日程の変更を記入していく。
「----それではお願いします」
電話を終え、スケジュール帳と携帯をバッグにしまう。
カタン...
振り返ると真っ青な顔をした佐々木。その手からロザリオが落ちた。
「そのリング...」
あわてて左手を隠すがもう遅かった。
「あの人の大切な人って...」
佐々木の声が震える。
----もう、すべて終わりだ----
佐々木の前に落ちたロザリオを左手で拾う。
泉美はその時初めて佐々木の前で左手を出した。
店の外に出ると泉美は携帯を取り出し彼に電話をかけた。
「......もう、全部終わり......」
それだけ伝え電話を切る。
冷たく降り注ぐ雨は、泉美の心までも濡らしていった。