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ラベンダー
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novelistID. 16841
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魔術師 浅野俊介3

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「キャトル…お前…そんな残酷なこと…」

浅野が呟いた。
圭一が目を覚ました。

「?…!!浅野さんっ!!」

圭一が飛び上がるようにして、浅野に駆け寄った。

「大丈夫でしたか!?」
「圭一君…」

浅野が涙ぐんでいる。

「マッドエンジェルが…死んだよ。」
「!?…え?」
「君を助けるために…死んだ…」
「…どうして!?…」

圭一がそう言うと、キャトルが駆け寄ってきた。

「にゃあ」
「え?」

浅野が目を見開いた。

「死んでない?…だってあれは…」
「にゃあっ!」
「そんなこともわからないのかっって、わからないよっ!」

浅野が言った。

「にゃあにゃあにゃあ!!」
「……」

浅野は黙ってキャトルの言葉を聞いていた。

「あ、そっか。」

納得したような浅野に圭一が聞いた。

「キャトルはなんて?」
「…圭一君。こんな時に悪いが、マッドエンジェルに違う名前をつけてやってくれ。」
「名前?」
「マッドエンジェルは元々はお前の守護天使だった。彼はお前に恋したために、堕天使となったんだ。」
「僕に!?」
「男の姿をしていたが、天使にも悪魔にも本来性別はない。…マッドエンジェルは生まれ変わるつもりで、お前の命を救ったんだよ。」
「…名前をつけてあげれば…生まれ変わるんですか?」
「そう。ただ悪魔のままだけどね。」
「悪魔は…もう天使にはなれないのですか?」
「…無理だろうな…神の赦しが得られないと…」
「…でも、可能性はあるんですね?」
「…ある。」
「僕…元々、つけてあげたいと思っていた名前があるんです。マッドエンジェルじゃ可哀想だから…」
「!?…なんて名前だ?」
「リュミエル」
「!?…リュミエル!?」
「フランス語で「光」という意味です。」
「しかし、最後に「エル」がつくのは天使しか許されていない…。」
「知っています。でもせめて名前だけでも天使っぽくしてあげてもいいじゃないですか。」
「…圭一君。」

キャトルが圭一の肩に飛び乗って、頭をこすりつけた。

「キャトルも気に入った?」

圭一がキャトルを肩から下ろして胸に抱いた。

「…リュミエルか…いい名だな。」

浅野が呟いた。

・・・・・


「で、光(ひかり)ちゃん。」

食堂で、浅野が圭一の肩に座って腕を組んでいる、小さな「リュミエル」に言った。

「その呼び方はやめろ。」

リュミエルがぶすっとした表情で言った。…一般人には姿が見えない。が、もちろん圭一には見えている。
圭一はくすくすと笑っていた。

「良かったね。生まれ変われて。」
「すべてマスターのお陰だ。」
「ほんとにマスターを愛してるんだね。」

リュミエルが真っ赤になった。そしてシャボン玉が破裂するようにして消えた。
圭一が浅野に尋ねた。

「…消えた時って…リュミエルはどこにいるんですか?」
「魔界だと思うよ。今頃、赤くなった顔を必死に叩いているんじゃないか?」

圭一が笑った。

「しかし、召喚せずにリュミエル…あの時はマッドエンジェルだったが…現れたのは驚いたな。普通は召喚紋が必要なのに。」
「召喚紋?」
「呼びだす時はヘキサグラム…六芒星を書くんだ。」
「ああ、それが召喚紋ですか。」
「封印紋はペンタグラム…五芒星というように、紋が決まっているんだ。」
「でも…リュミエルはさっき勝手に出てきましたよ。」
「もういいんじゃないの?自分が圭一君に会いたいから来ちゃうんだろう。」

圭一が照れ臭そうに笑った。

「僕のどこが好きなんだろう。」
「リュミエルが一番君とつきあいが長いから、彼にしかわからないことがたくさんあると思う。」

圭一がうなずいた。
浅野がコーヒーを一口飲んで言った。

「ただなー」
「?なんです?」
「キャトルなんだが…。」
「?」
「魔界に片足突っ込んじゃったみたいなんだ。」
「!?え?」
「実は君が命を落とした時に、キャトルが怒りに任せて、リュミエルと契約をしちゃったみたいなんだよね。」
「キャトルが!?」

圭一が下を向いた。

「そんな…」
「一瞬だが、炎をまとった獅子になったよ。その後、リュミエルと俺にもわからない魔界の言葉で会話をしてたしな。」

浅野はそう言ってから(俺はどうして悪魔なのに魔界の言葉がわからないんだろう???)とふと思った。

「じゃあ僕は…」

圭一が微笑みながら言った。

「死んだら、リュミエルとキャトルのいる魔界に連れて行ってもらおう…」
「圭一君…いい話だけど…」
「?」
「死んでどこへ行くかは自分で決められないんだ。」
「!?」
「君はこのまま行くと天国行きだ。」
「……」
「だから、リュミエルとキャトルが天国に行けるようにする道を探そう。」

圭一は浅野を見開いた目で見た。そして、微笑みながらうなずいた。

(俺は多分、魔界への道しかないだろうな。)

浅野は圭一に微笑みながら、独り密かに思った。

(終)
作品名:魔術師 浅野俊介3 作家名:ラベンダー