きえたミットのなぞ
「見て!すごいわ!」ジニーはさけんだ。「だれかの足跡よ!」「よし証拠一だ!」マーガーがいった。「だれの足跡だ?」「わかるわけないでしょ!」ジニーはさけんだ。「あっそうか」おおげさにマーガーはいった。ジニーはおおまたにあるいていってタイプライターの前にすわった。そうしてしばらくキーをカタカタやっていたがちょっと顔をあげて時計をみた。午後8時。「わたしもうかえらなくちゃならないわ」ジニーはそう言ってたちあがった。そしてうらめしそうにロンやムッセをながめた。なぜ自分だけ帰らなければならないのだろうか?でもかえらなければならないのだ。ジニーはできるだけはやくそこをたちさりたかった。が、入口の敷居につまずいた。ドテッ! ひどい音がした。ひざがひどくすりむけて血が出ていた。「屋根裏から帰るといいよ」マーガーがいった。今度はロンとムッセがうらめしがる番だった。実はマーガーとジニーの家の屋根裏はパイプ一本を通じてつながっているのだった。そのため雨にぬれずに帰れるのだった。ところで今はどうだろうか。ちょうどうまいぐあいに外は雨がふっていた。ムッセはマーガーの2軒先にすんでいたし、ロンはずっとむこうの4軒先にすんでいた。というわけで2人がうらめしがるのもむりはなかった。ジニーは階段をあがっていった。そして屋根裏にあがった。扉を開けなかにはいった。中は暗く静かだった。上ではボトボトと雨の音がした。しばらくいくと小さな紅色の扉があった。ジニーはそれを開け中にはいった。ジニーの部屋は屋根裏だったから寝る用意はすぐにできた。ジニーは窓を開けた。と、とたんにものすごい風が吹きこんできた。あまりに強い。ジニーは大急ぎで窓をしめ、ちらばった紙を拾いあつめた。その中にうすい緑色の封筒があった。ジニーはこの封筒がどこからきたか、一目でわかった。もう何回もこの封筒を見たはずだ。それはお父さんとお母さんだ。ジニーは開けてみた。中にはみかん色の紙がはいっていてそこには次のようなことがかいてあった。<ジニーへ 風が強いので今夜旅行にでます。1か月マーガーの所でお世話になってください。>ジニーはうれしくてしかたなかった。ああこれでミット事件に熱中できる!手紙にはかいてなかったがジニーはこれから出かけることにした。大急ぎでリュックサックにいろいろなたくさん探偵道具をつめると服を着替え時計をみた。8時10分。まだまだ十分間に合う。ジニーはちからまかせに扉をおして外に出た。雨はやんでいたが前より寒くなっていた。ジニーは小走りでマーガーの家にむかった。事務所の扉は半開きになって風にゆれていた。ジニーはマーガーの家のベルをならした。ピンポーン!けたたましくベルがなりひびいた。「はーい」 マーガーのお母さんのいらいらした声がきこえた。が、ジニーを見たとたんその顔はぱっと明るくなった。「おお、ようこそ!バーサからきいたわ」マーガーのお母さんは顔中ほころばせていった。だが、ジニーはにこりともせず「おじゃまします!」とだけいった。「マーガーは裏の物置にいるとおもうわ」とマーガーのお母さんはいった。「しってます」ジニーはこたえた。「そう」マーガーのお母さんはいった「「ならいくといいわ」「ええ」ジニーはこたえ、物置にむかった。
新しいミット
なにがどうなったかわからないちにジニーは目をさました。半開きの窓からは明るい朝日がながれこんでいる。そばの電信柱に止まっている小鳥がまるで賛美歌を歌うようにさえずっている。ジニーはとびおきた。大急ぎで髪をとかし茶色のシュシュでしっかりむすんだ。これは教会にいくときだけにするものだ。服はこい紅色のビロードとモスリンのよそ行きだ。はっきりいうといつものジニーとちがってなんだかへんだ。ジニーはてきぱきと布団をたたみ押入れにおしこんだ。靴だっていつもと違う。いつものよれよれの革靴ではなく、派手な赤いてかてかの靴だ。おおきなピンクの花型のとめがねがついている。まったくもってへんだ。が、そのことはあとで話そう。その日の朝、マーガーの家の食卓ははなやかにかざられていた。はいきれないほどのごちそうのごちそうの真ん中にはおおきなおおきな七面鳥がある。きっと、一日たっても食べきれないだろう。机のわきには<ハッピーバースデー・マーガー>と書いたカードが置いてある。そのそばにはやまとつまれたプレゼントがおいてある。そう、そのとおり今日は、マーガーの誕生日なのだ。広間に全員があつまった。机の上のケーキに火がつけられけされた。
続く