完結してない過去の連載
家の水道からこの前母さんが買ってきた真新しい緑色のホースで水を入れる。
(あ…でも)
そういえば父さんが言っていた。
金魚は水道水で飼っちゃだめなんだって。
なんかカルキ?とかなんかが入っているらしい。
もう俺のうちには金魚はいないけど、亀はどうなんだろう。
考えたすえ、しばらく水道水は日光浴?させておき、その間亀は日陰に置いておくことにした。
…これでひからびることはないだろう。
亀はぼーっとしてるくせに、妙にきりりとした表情をしている。
日差しがあったかくて眠くなる。
僕の家は古い木造の平家だ。
小さくて周りを囲う木のせいで少し日当たりが悪いけどちゃんと庭もある。
それにこんな春の午後なんかはちゃんと日が暑すぎることなく入ってきて心地いい。
僕は家と同じだけ古く、歩くとぎしぎしなる縁側に座って足をぶらぶらさせていた。
亀を見ながら。
そうしていたら、
ぼんやりと…
小さかった時のことが目の前に広がってきた。
まるでじわーっと、ゆっくりと記憶の引き出しが開いていくような感じ。
今も充分子供だけど
もっと子供で
もっと可愛かった時のことを…
思い出していた。
公園で近所の功ちゃん達と遊んでいた時何気無く言われたこと
七希ってさぁ
なんでそんな名前なの
変なのーっ
同じマンションに住む奥さん達が、クラブから帰ってきた僕を見付けては声のトーンをおとしてささやいていたこと
可哀想に
やっぱり父親がいない子は…
コドモノクセニミョウニオトナニキヲツカウ
「七希」
母さん…?
「こんなとこで寝て。風邪ひくわよ」
帰ってきてたんだ
「…なにこの亀」
やべ
作品名:完結してない過去の連載 作家名:川口暁