完結してない過去の連載
あの人はその後
現れたのかもしれないし
そうじゃないのかもしれない
顔を見ていなかったから
もしかして
もう一度
会えたかもしれないのに
お礼が
言えたかもしれないのに
もう二度と
会えないのだろうか...?
「すずおんちゃん?」
「は?」
「あっすずねちゃん?」
わざとらしい間違い方
河本さんだった
「なんですか?」
「金魚さんって知ってる?」
「は...?」
「ほら、これ見て」
彼女は
仕事中なことを無視して
雑誌をひっぱりだしてきた
「ほらこれ。超有名メイクアーティストなの。でもね、素性が全くわかんないんだって!!モデルさんにさえこの覆面かぶって素顔を見せたことないの」
(ふーん...)
直感
女の直感かはわかんないけど
あの人はきっと
金魚さんだったのだ
なんの根拠もないけど
はっきりと分かっていた
こんなにどきどきしたのも
産まれて初めてかもしれない
それだけ
嬉しかったのだった
そして
ちょっとだけ
ほんのちょっぴりだけ
河本さんが
好きになった
作品名:完結してない過去の連載 作家名:川口暁