詩集 『天―AME―』
『風』
風を凌ぐ鳥は
風に護られ飛躍する。
風に支配される鳥は
その身を風に任される。
風に生きる者達の
僅かな風に驚かされ
心くすみ
ただ夢見心地に笑うだけ。
風は大気に
大気は世界に
大いなる恵みの始まりにして
大地に芽吹く
かすかな命の友。
風よ。
精霊よ。
もし見ているのなら
この地を浄化してはくれまいか?
この地の邪気を
祓ってはくれないか?
願うことなら
この身に宿る欲望を
その風で
消し去ってはくれないか?
願いが届くなら
こんなに空を眺めたりはしないのに。
あの人の顔が浮かぶ空を
眺めたりなんかしないのに。
それでも
人は願うのでしょう?
作品名:詩集 『天―AME―』 作家名:柳 遊雨