詩集 『天―AME―』
『底無き欲望』
若い命は消え失せて
白髪の年老いた命が生き延びる
乾いた夢の先
どこに居場所を求めるのか
誰が救いを求めるのか
人は愚かだ
醜い野心に蝕まれ
ついに心は朽ちてゆく
堕とされる場所を知りながら
逃れたいとさえ思うのに
もう足元は地の底だ
残された指先で空を仰ぐ
見上げた空の青さに恐れを抱き
それでもなお憬れ続ける
崩れ落ちる身体に巻きつく己の欲望
底なしのそれは自身の糧だ
もう終わりは近いのかもしれない
足掻けぬ運命ならば
潔く悪に染まってしまおう
そのほうがずっと楽だ
気持のよいものなのかもしれない
若い命は朽ちてゆく
老いた命は芽吹きを失い
世界の闇へと堕ちてゆく
誰も知らない悪夢など忘れてしまおう
それが現実になるのだから
作品名:詩集 『天―AME―』 作家名:柳 遊雨