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恋の掟は冬の空

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3人でお勉強


「あ、そっか、それでいいんだ・・」
高校生は直美に、うれしそうに返事をしているようだった。
邪魔しちゃいけなかったから、席を一つ空けて、一応は聞いているふりだった。ま、聞いててもたぶん あんまりわからないはずだった。
「そそ、でも、夕子ちゃんさ、文法はけっこう得意そうだから、いけそうだけど、ちょっとわからない単語多いでしょ・・。少しでも単語を多めに覚えたほうがいいかもよ、書けなくてもいいけど、意味わかるぐらいに・・ちょっと、時間ないけど、がんばりなよ・・」
それって、俺も高校生の時に直美に言われたような気がしていた。
長文なんかだと 全然わかんない単語が、けっこう多くて周りの文章から推測してたけど、はっきりいって、全然的外れなことが多かった。
「わかりました、がんばってみます」
素直な返事を高校生は返していた。

「で、他にわからないところは・・」
1番聞きたかったところは 解決したようだった。
「えーっと、でも時間つぶしちゃ悪いから・・」
「平気だってば・・ね、劉」
こっちを直美がみたから、うんうんって うなずいていた。
「じゃぁ 甘えて、これなんですけど・・」
言いながら開いた本は、大学ごとに過去の入試問題を集めた本だった。
「うわぁー これかぁ・・私が受けた試験問題でてるんでしょ、これって・・」
夕子の第一志望の大学は 直美が通っている大学だったから、そこの本だった。赤い色の見覚えのある本だった。
「あんまり 出来なかったんだけどなぁ・・」
直美は、去年の問題のところを開けながら思い出しているようだった。
「私、この問題だと受からないと思う・・すごく 出来なかったから・・自信なくしちゃった・・」
「うーん。そうなのぉ・・でもさ、私も、そんなに出来た記憶じゃないよ。大丈夫だって。100点とらなくっても 受かるんだからさ・・で、どこ聞きたいの・・・」
優しいおねーさんになっていた。
「ここ なんですけど・・答えも見たんだけど、よくわからなくって・・」
「えっと、あー ここかぁ ここね私も間違えた・・今はわかるけど・・うんと、ここはね・・・」
受験の時に直美も間違えた場所らしくて、一生懸命にわかりやすく教えているようだった。
横で見てるだけだったけど、けっこう退屈はしなかった。直美も先生役が、楽しそうだった。

「ちょっと 考えてみて・・ここのところ。コーヒー切れちゃったから入れなおしてくるから・・その間にやってみてよ。夕子ちゃんもコーヒー飲むでしょ・・」
「うゎ、すいません」
「劉のも入れてくるね、ちょっと待っててね」
言い終えると席を立って俺の頭を軽くたたいてカップを持って歩きだしていた。
「すいません 長くなっちゃって、これで終わりにしますから・・」
頭を下げて夕子は謝っていた。
「いいって、気にすんなって。直美もけっこう、楽しそうじゃん」
「そうですかぁ・・二人っきりの時間つぶしちゃって、少し怒ってないですかぁ」
「そんなことないよ。一緒にいるから平気だってば、俺もだけど 直美もなんか、一緒にいれば満足ってタイプだから・・」
「ふーん いいなぁ、仲いいですもんねー。あのう、柏倉さんが直美さんに一目ぼれですかぁ・・」
「いいから 帰ってくる前に問題やらないと、そっちのほうが怒られるよぉ」
ちょっと、笑いながらだったけど 怒った口調で言い返してあげた。
「あっ はぃ」
高校生はあわてて、問題を見つめ直していた。

「はぃ 夕子ちゃんのと 劉のね。どう できたぁ・・」
コーヒーの入ったカップを置きながら夕子の手元を覗き込んでいた。
「これで 合ってますか・・」
「うんうん 正解。じゃぁ コーヒーブレイクね」
言いながら とっても満足そうな笑顔の直美だった。
「すいません ありがとうございました」
「いいのよー がんばってね。ここじゃ勉強大変だろうけど・・」
言いながら、窓際に直美はカップを持って移動していた。
「あー 劉ー 月が綺麗に見えるよぉー ねぇ 見てごらんよー」
直美は本当に空とか星とか月を眺めるのが好きな子だった。
「どれ、見えるの、こんなところから・・」
返事をしながら、杖を片方だけとって立ち上がって直美の横に移動していた。
「あそこ、ほら・・」
指差した方向に綺麗な 三日月だった。
「ほんとだぁ・・あんなに低いところなのに、ちょうどビルの谷間だね・・」
「うん。きっと直美のために ちょうどあそこにでたのかも・・」
「それは ないんじゃなぃ・・・」
「もー どうして そういう言い方するかなぁ・・」
言いながら指でおでこを押されていた。
「うわぁー」
後ろに倒れそうになって、やっと骨が1本になってきた足を地面に付きそうになった。
直美があわてて出した右手の腕をつかんで、ぎりぎりのところで助かった。
「ふー びっくりしたぁ・・退院が延びちゃうとこだったぁ・・大丈夫だよね、足・・」
俺よりも、もっと直美はあわてていた。
「うん、大丈夫」
「もう 劉が余計な事を言うから・・でも、よかったぁ・・もう、ちゃんと杖も両方つきなさいよ」
言いながら、もう一つの杖を差し出してくれた。
「はぃはぃ ごめんなさい、気をつけます。あの月はきっと直美のために、あのビルとビルの間に、出ました」
「もうー そんなことばっかり・・」
「でもさ、ほんとに 綺麗な三日月、それも夕焼けみたいに、すごく赤いや・・」
「うん。綺麗だね」
直美に肩を支えられていた。

「あのう・・・さっきから、ずっーと私はお邪魔かとは思うんですが、さらにお邪魔して私もその月を見てもいいですかぁ・・」
夕子だった。
直美と顔を見合って笑っていた。
高校生も頭をちょこんと下げて笑っていた。

作品名:恋の掟は冬の空 作家名:森脇劉生