妖怪の杜
もやもや
何時もの地下鉄のホーム。
何時もの立ち位置。
熱風と共に滑り込んで来る電車。
何時もの女性専用車輌に乗ったところで、
通勤ラッシュ時の混みようは他の車輌となんら変わらない。
毎日同じ電車で職場に行き、嫌な上司の口臭、
体臭に辟易し、お局様の嫌がらせにも耐え…
やっとの思いで仕事を終え帰宅する。
人生の疲れが肌に素直なほど表れだすお年頃。
OL、サラリーマン、人って何なのさ。
薄暗い街灯の下をトボトボ歩き、何時ものコンビニの前で立ち止まる。
今日も居た。
金髪にピアスのチャラ男…
毎日コンビニ前で、おでんのガンモを地べたにだらし無く座り頬張るあいつ。
私が夕食を買い終え出て来ると決まってナンパするこの男。
「ねえ、運命感じない?」
1ミリも感じません。
無視して歩き出そうとした時。
「君、生きていて楽しい…」
何なのコイツ。
楽しい訳ないジャン、仕事するのも生きているのも楽しいとかじゃないし…
頭の中を混乱させるような事なんて言わないで。
「何なの、何が言いたいの」
チャラ男は私の罵倒を完全無視でニコッと笑い、私の額に手を添える。
目眩ともつかない感覚に襲われ、目の前が真っ暗になる。
そして、霧が晴れるかのように…
見慣れた町並み、何時もの風景が飛び込んでくる。
けれど、そこに人は誰も居ない。
何時も夢で見る光景…何、夢、幻、催眠術。
チャラ男が手を離した瞬間幻影は消え失せた。
同時にチャラ男も消えた…
え~何、幽霊、お化け。
ハッ疲れている私。
そう、絶対疲れているんだ…ハハハっ。