小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
かいごさぶらい
かいごさぶらい
novelistID. 16488
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

かい<上>ただひたすら母にさぶらう

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


      第一章 場当たり的、その場しのぎ、手探りの介護
 

 「おか~あさん、さむいねん!」

2005/2/23(水) 午後 0:19
某月某日、母は9時頃床についた。毎日平均して、5~6回は夜中に徘徊する。おトイレへ3回くらい。無意識の行動か?、で2~3回くらい、私を起こしに来る。この日は、底冷えがして、大変寒かった。何時ものように、おトイレへ2回ほど私を起こしに来た。12時を少し回った頃と、明け方の3時頃である。
「おかあさん、おかあさん」と声を出しながら、母が私の寝床へ四つん這い(母は2度腰を圧迫骨折していますので自力で立って歩くことが出来ません)でやってきて、そのまま私の寝床へ入ってきた。

「どうしたん?」

「にいちゃん、さむいねん」

「ほんだら、ここで寝るか?」

「おか~さん、さむいねん、ねかして~」

「よっしゃ、ここに入り」かくして、母と私は、一緒に同じ寝床で6時過ぎまで、すやすやと、寝入ったわけである。母90うん歳、私し50うん歳である。母の寝顔は観音様だ。



 「だれがこんなことしたっ!」

2005/2/25(金) 午前 11:20
某月某日 午後11時半頃。母が四つん這いで(母は腰の圧迫骨折を二回しており自力歩行が出来ない)わたしの寝床へやってきた。

「にい~ちゃん、にいちゃん!」

「お便所か?」

「はよはよー」

「はいはい、行こか~」母の両手を取り、立ち上がらせる。おトイレまでは3メートルくらいだ。

「はよしんかいな!、もう」

「もうちょっとやで、我慢しぃ~や」

「なにしてんのー!」母にすれば、私がもたついているように見えるのだ。

「腰痛いやろ、慌てんでええから、大丈夫やでぇ!」ようやくトイレにたどりつき、母を便座に座らせた。母が用を足している間に、私は、キッチンへ急ぎ、給湯器のスイッチを入れに行った。

「にいちゃん、にいちゃん、なにしてんのー!」トイレから母の声。声のトーンが何時もと違うので、あわてて、トイレへ。便座の前にウンチが!。

「お袋ちゃん!ちょっと待って!そのまま、動いたらあかんで~!」

「なんでやのん!」怪訝そうに私を見上げる。

「ああ!触ったらあかんで~」

「ほらここ汚れてるやろ?拭かなあかんから~」

「ああ、触ったらあかん!」

「はよしいな、もうーっ!!」

「分かった、わかった、早よするから、ちょっとそのまま動いたらあかんで~!」私は急いで、雑巾や便座拭きで、母の両足に汚物が付かない様に、必死で拭いた。

「にいちゃん、さむいっー!はよしてーな!」

「もう直ぐやで~」

「あんたっ!わたしが、さむいのん、わかってんのんかっー!」怒鳴る母。ついにキレました。

「さむいやんかー、アホー!はよしいなっー!」と、私の頭をこづきながら、本気で怒っているのだ。

「そんなんこと言うたって、なぁ見てみ、ここ汚れてるやろ、綺麗にしとかなあかんやんか~」トーンダワンする私の声。

「だれがこんなことしたっー!」

「うん!」と、私は絶句し、母の顔を見上げた。

「なにをみてんのんっ!」(あほかーっ!、と言わんばかりに)そんな私を母が一喝した。(僕や御免なー!)と、私は心の中で呟やきました。この家には、母と私の二人きりなのだが。



 「うん、わたしら、きょうだいやねん!」

2005/2/27(日) 午後 0:43
某月某日 デイケアで月曜日から土曜日迄、お世話になつている老人介護施設にて。わが母は現在、要介護度5である。来年度の介護認定の「取調べ」と母は言っておりますが、要するに、来年度の介護度のランクを決めるための、調査作業である。区の社会福祉の調査員(女性職員)と、本日主役の母(ご本人はもちろんお気づきではありません)と私の三人が、会議室に案内され、くだんの調査員の取調べが始まった。

「こんにちは、今日はよろしくお願いします。私は00と申します」と調査の職員さんが挨拶する。

「はい、こんにちは」と、母もペコリとお辞儀する。

「にいちゃん、どこのひとや~?」と、母が私を見る。

「うん、区役所の人や、お袋ちゃんに、聞きたいことがあるねんて」

「ふ~ん、はよしてちょだいね!」この表情は警戒している顔である。

「お名前は、なんと仰るんですか?」

「00ですけど」と、素っ気ない母。

「00さん、お年はおいくつですか?」

「う~ん、60ぐらいかな~?なっ、にいちゃん?」と、私には笑顔で答える。

「はい、分かりました」事前に母の事は調査済みだ。あっさりしたものである。

「00さん、ここは何処か分かりますか?」

「がっこうやーっ!」母は、日頃からデイケアに来ることを「学校に行く、と言っております」。

「はい、分かりました」

「00さん、お隣の方はどなたですか?」

「うん、にいちゃんやっ!」と、母は、ニコニコ顔で答える。

「00さんのお兄さんですか?」母に念を押す。

「うん、わたしら、きょうだいやねん」と、得意げな顔をする母。私は、50うん歳ですから、母が60歳くらいであれば、確かに兄弟姉妹と申しても、何ら不思議ではない。
うん、確かに、母の言っていることは、辻褄が合っている。私と母は兄弟だ。こうした、やりとりが延々小一時間ほど続き、今年も「取調べ」が無事終わった。



  《2005年3月》

  「お供え」

2005/3/1(火) 午後 1:06
某月某日 夕食後の私と母の会話だ。母はいつものように、ティシュの箱にせっせと手を伸ばし「お仕事」をしている。そのお顔は真剣そのものである。声をかけるのも、はばかれる程の迫力だ。(ティシュを一枚一枚丁寧に折り畳んで重ねていくのだ)。

「お袋ちゃん、そんなにようけ出してどうすんのん?」ティシュ箱が空になるのを恐れる私。そんな、母に声をかける私の何時もの質問である。

「せな、あかんねん、だれもできひんやろう~」と、当然と言わんばかり。

「うん、そ~やけど、多すぎるのんちゃうか?」さりげなく言い、止めさせなければならないのだ。

「なにゆ~うてんの、まだ、すくないで、よ~うけいたはるから」私の思惑を見透かすように。母はティシュを一枚一枚丁寧に折り重ね、どんどん積み上げていくのだ。

「何処にいたはるん?」話題を変えてみる私。

「あっちこっち、おくらなあかんやんかー!、あんた、そんなこともしらんのん!」

「いや~、分かってるけどな、何時、送るん?」逆らわずに、慎重に言葉を選ばなければならないのだ。

「きょう、おくらなあかんやんかっ!」(そんなこともわからんのかー)と、言いたげな母。

「できたら、すぐに、にいちゃんおくってや~」と、悠然と言う。

「もう、晩やで、今日は送られへんで、遅いからな~」迫力のない私の声。

「なにゆーうてんの!、おくらなあかんやんか、まってはるのに、そやろー!それもわからんの、あんたわっ!」やっぱりだ。