パンドラの鍵
追 跡
昨夜の雨が嘘のように大学のキャンパスには、太陽の光がサンサン
と降り注いでいた。
「成瀬!」
貴之は、学食の片隅で仲間とたむろっている成瀬友也の姿を見つけ
ると声をかけた。
「工藤か、久しぶりだな」
「あぁ」
そして周りを見渡すと、
「ちょっといいか?」
と伺い、向こう側の誰もいないロビーを指さした。
「なんだ、話しか?」
「ちょっとな」
友也は仲間の中から抜け脱してくると、貴之の横に並び歩き出し
た。
「あいつらに聞かれたらやばい話か?」
「いや、そうでもないけど…」
そう答える貴之の言葉は、少し濁っている。
貴之はそっと幼友達の様子を窺った。
流行の服に身を包み、手入れの行き届いた髪型をして屈託のない笑
顔を浮かべる友也。