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パンドラの鍵

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現場に足を踏み入れた瞬間、漂ってきたむっとする血の匂いに高木
京平は思わず吐きそうになってうめいた。

そんな彼の背中を先輩の曽根謙一が勢いよく叩いていく。

「曽根さん、やめてくださいよ」

青白い顔でそう言う後輩の姿を見て、曽根は腹を抱えてゲラゲラと
下品な笑い声をたてた。

「まだ仏さんの顔も見ていないうちから、そんな顔してるようじゃ
先が思いやられるぞ!」

「そんなこと言われても……。俺、ほんとに血とか駄目なんですっ
て。ほんと勘弁してくださいよ」

「ほらほら仕事だ。ガイシャが殺害された現場は、奥にある和室だ
ぞ」

「和室っすか」

「あぁ、夜は寝室として使っていたらしいな」

京平は曽根に無理やり背中を押される形で居間の突き当たりにある
襖を開いた。

「………」

声が出なかった。

仏壇が置かれた六畳ほどの室内は、おびただしい量の血で真っ赤に
染まっていた。

ガイシャはアルミサッシの窓に背をもたれて息だえている。

そして…

「曽根さん、ガイシャの頭は?」

「下だよ」

「下……」

京平は窓際に近づくと、恐る恐る窓の下を見下ろした。

確かに植え込みの側に生首らしきものが転がっている。

「意味は…、何かあるんでしょうか」

「どうだろうな」

「首なんて跳ねたら、目立つだけじゃないですか。なんだってこ
んな悪趣味なこと」

「愉快犯か、精神異常者かってところだろ。シリアルキラーのお
出ましってやつよ」

「じゃあ、また事件は起きると」

「可能性はあるだろうな」

京介は、背後に妙な視線を感じて振り返った。

そこには、箪笥の上に飾られた写真立てから、ガイシャなのだろ
う…。

人の良さそうな中年の女性が、幼い息子と笑顔で京介を見つめて
いた。
作品名:パンドラの鍵 作家名:まゆ