灰色の双翼
レイスを怒らせた。そう思って慌てて呼び止めると、レイスが自分の長い髪をばさりと解くところ。なんでだかその姿にまたどきりと胸が大きく脈打った。
「あ……」
何か言いかけたのに、続く言葉が見つからない。
「ほら、早く立てよ」
苦笑しながらレイスがユイスを引き上げる。
「いつか……」
いつか帰れるといいな。
そう耳元でささやかれたレイスの言葉。微かに憂いのこもったような。
ふい、とレイスはすぐに顔を背けた。行くぞ、とユイスに背中を向けて歩き出す。
慌ててユイスはその後姿を追いかけた。
見ると館の入り口の前にザフォルの姿があった。唇の端を下げてレイスは立ち止まりかけるが、それを後ろから追い抜いてレイスを招いた。
「行くんでしょ!」
レイスは言葉につまってぼりぼりと困ったように頭を掻く。しかしすぐにあきらめたのか、再び歩き始めた。すぐにユイスの隣に追いついてきて、共に向かう。
上ったばかりの太陽を背に負って、まっすぐに丘の上を目指していった。
その先に。二人で新しい希望を見つけようとして。