もふ恋。
夕方18時。いつもバイト先のゲームセンターの前を犬を連れて散歩している男の子がいた。少し茶色がかった癖のある髪が、風に吹かれてふわふわと靡く。
その足元に従うのは、しなやかな茶色の毛並みをしたコリーだ。
ふさふさの尻尾を揺らしながら歩くその子を、彼はうちの店の駐輪場の柱に待たせて、一度クレーンゲームをしていくのが習慣だ。
今日も彼はチャリンチャリンとコインを投入する。ガラス張りの箱のなかをぐるぐると回っては覗き込んで、ひしめき合うぬいぐるみの中からターゲットを絞る。今日の台はお茶犬のようだ。
「うーん……。あ、隣行った」
慎重にクレーンを操って、大きな頭をアームに引っ掛ける。狙ったところとは違うようだが、ぐらぐらしつつもピンクのぬいぐるみが開口部へと上手く落下した。
「よっしゃあ! ……って、あれ?」
思い通りの成功にガッツポーズをした彼が、取り出した景品を手に首を傾げる。
「あんま手触り良くないし、こいつ猫じゃん」
どうやら新製品として追加された猫のシリーズはあまりお気に召さなかったらしい。
触り心地の良さそうなふわふわの頭に手をやって少し考えこんでいた彼は、きょろきょろとあたりを見回す。ばちっと目が合った。ずっと見ていたせいだ。わたしは掃除用のモップを抱えてレレレのおじさんよろしくあたふたと取り繕うように床を掃き散らした。そのまま危うくゴミを集めたちりとりをひっくり返しそうになる。
ぷっと吹き出して、彼はわたしに近づいた。
「いる?」
そうして取ったばかりのお茶猫のぬいぐるみをわたしに差し出した。
「え?」
「じっと見てたから欲しいのかと思って」
はい、と当たり前のように渡してくるものだから、わたしは何も考えられないままに素直にそれを受け取ってしまった。
「店員さんでも景品欲しかったりするんだな。あ、だから働いてんのかな?」
そのときわん!と彼の犬が主を呼んだ。
「今行くよ、ラッシー」
おそらくその単純な由来のわかる名前を呼びかけて、じゃあ、と彼はその犬の所へ行ってしまった。
待たせたな、と、その頬をくっつけてもふもふとした毛並みを撫でてやると、犬もうれしそうにしっぽをばたつかせてぺろぺろとその顔を舐める。「止せって」笑いながらしあわせそうに言う顔がくしゃくしゃになるのを見ていると、きゅんと胸が高鳴った。
その足元に従うのは、しなやかな茶色の毛並みをしたコリーだ。
ふさふさの尻尾を揺らしながら歩くその子を、彼はうちの店の駐輪場の柱に待たせて、一度クレーンゲームをしていくのが習慣だ。
今日も彼はチャリンチャリンとコインを投入する。ガラス張りの箱のなかをぐるぐると回っては覗き込んで、ひしめき合うぬいぐるみの中からターゲットを絞る。今日の台はお茶犬のようだ。
「うーん……。あ、隣行った」
慎重にクレーンを操って、大きな頭をアームに引っ掛ける。狙ったところとは違うようだが、ぐらぐらしつつもピンクのぬいぐるみが開口部へと上手く落下した。
「よっしゃあ! ……って、あれ?」
思い通りの成功にガッツポーズをした彼が、取り出した景品を手に首を傾げる。
「あんま手触り良くないし、こいつ猫じゃん」
どうやら新製品として追加された猫のシリーズはあまりお気に召さなかったらしい。
触り心地の良さそうなふわふわの頭に手をやって少し考えこんでいた彼は、きょろきょろとあたりを見回す。ばちっと目が合った。ずっと見ていたせいだ。わたしは掃除用のモップを抱えてレレレのおじさんよろしくあたふたと取り繕うように床を掃き散らした。そのまま危うくゴミを集めたちりとりをひっくり返しそうになる。
ぷっと吹き出して、彼はわたしに近づいた。
「いる?」
そうして取ったばかりのお茶猫のぬいぐるみをわたしに差し出した。
「え?」
「じっと見てたから欲しいのかと思って」
はい、と当たり前のように渡してくるものだから、わたしは何も考えられないままに素直にそれを受け取ってしまった。
「店員さんでも景品欲しかったりするんだな。あ、だから働いてんのかな?」
そのときわん!と彼の犬が主を呼んだ。
「今行くよ、ラッシー」
おそらくその単純な由来のわかる名前を呼びかけて、じゃあ、と彼はその犬の所へ行ってしまった。
待たせたな、と、その頬をくっつけてもふもふとした毛並みを撫でてやると、犬もうれしそうにしっぽをばたつかせてぺろぺろとその顔を舐める。「止せって」笑いながらしあわせそうに言う顔がくしゃくしゃになるのを見ていると、きゅんと胸が高鳴った。