5月 枇杷の木
心底嬉しそうに報告する涼ちゃんの声を聞きながら、陽子ちゃんは夢中で万華鏡を覗いてゆっくり回転させた。
「そっかあーいいなぁ。陽子も欲しいな」
「じゃあ、今度の陽子ちゃんの誕生日に、僕が作ってあげるよ!」
凉ちゃんは、色素の薄い綺麗な色をした髪の下の同じように色素の薄いキラキラした瞳を輝かせた。
「え? 凉ちゃん作れんの?!」
「ううん。作った事ないけど、お父さんに教えてもらって作ってみるよ!」
「本当に!嬉しいー!凉ちゃん、大好きー!」
陽子ちゃんは正に太陽のような笑顔を凉ちゃんに向けた。凉ちゃんは照れて耳が真っ赤になった。
あの時の凉ちゃんの耳みたいな赤・・・
陽子ちゃんは、そのまま静かに筒を回して色とりどりの模様にじっと見入っていた。