小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

= clock lock works =

INDEX|9ページ/14ページ|

次のページ前のページ
 

別れ



 






 いつもの12時。

「あ…。」

時計に気づいた私は顔を上げ壁に近づいた。
耳を壁に付けると、チク…チク…と心臓のような時計の秒針が聞こえる。



---今日も彼は話しかけてくれるだろうか。
心の隅で、少しだけ期待をしている自分が居ることに驚いた。







彼は私の知らない話をたくさん知っている。


この前の話は、雨の話だった。

一昨日は、家政婦さんの話。

特に返事もしない私に、何でも話してくれた。
その口調は、すごく…楽しそうでもあり、寂しそうな感じもあった。








 「こんばんは、おはよう!」

いつものフレーズで、いつもの声色の声が部屋に響く。

 「こんばんは。」
 「えへへ、今日は遅くなったね。」
 「そうね。…今日はどんな話?」
 「今日は散歩していた近所のおじさんの話で…」
 

またいつも通りの会話は続く。
クロックはよく喋る。だから彼に
「貴方はどうして私に話しかけてくるの?」
と、一度跳ね返したことがあった。
彼は、
「君に笑って欲しいんだ。」
と、照れたような笑いを含んだ声で言った。


彼は悪口や陰口を言わない。
純粋で、黒だらけの世界を鮮やかに染め上げてくれた。
私は、クロックが好きだった。











作品名:= clock lock works = 作家名:十六夜