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王子様












 「こんばんは、おはようございます」



扉の向こうから、微かにもれる声。
驚いて顔を上げる。
・・・王子様?
(そんなバカな)
私は自分の思想に笑いがでた。




 「君からしたら、今は午前かな。午後かな。」




王子様(仮)は話し続ける。



 「僕からしたら今は午後12時。もう朝だね。」



私の返答も聞かずどんどん喋る。
私は焦って慌てて話しかけた。




 「貴方は誰?」
 「あ、ごめん!僕は「クロック」。隣に住んでるんだ。」
 


私はマンションに住んでいる。
クロック・・・。そんな人居ただろうか。



 「実は僕、体が弱くて。夜中ぐらいに目が覚めちゃうんだ。」
 


この子(何歳なのだろうか)は自分の部屋から出たことがないらしい。
だから、今まで会わなかったのだと納得する。




 「よかったよ、一人なのは寂しいしね。」
 「・・・・・。」
 「僕、体の病気で成長が止まってるんだ、ほら、声幼いでしょ」
 「えぇ。」
 「見た目は若いけど、これでも結構長生きなんだよ。」
 「ぜひ、見てみたいわね。」
 「できたらいいな」




それからも彼は話し続けた。
特にそれといった内容ではなかったけど、楽しかった。




作品名:= clock lock works = 作家名:十六夜