= clock lock works =
…それから数十年経ち、私にも最期の時が来た。
「(結局、最期まで会えなかったわね…)」
ベットの上でもうあまり働かない頭でふと思う。
あぁ、あちらの世界では会えるかしら。
数十年もの間、彼を忘れた事はない。
私に世界の美しさを教えてくれた人。
私にいつも一緒に居てくれた人。
私が初めて愛した人。
もう会えない。
ならばせめて…
「ねぇ…」
枯れた声で呟いた私に周りの人達が過剰に反応する。
「私が死んだら……あの時計を…棺の中に入れてください…」
それから、目を閉じる。
遠のいていく意識の中で
もうならないはずのあの時計の音が聞こえた気がした。
作品名:= clock lock works = 作家名:十六夜