ボツネタ作品!
『嘘』
チャリティ本の掌編で作ったのですが…掲載をやめた作品ですのでこちらに投げ込んでおきます。
白い綿菓子のような物が空から降り続く真っ白な世界。
耳鳴りがするほどの静寂が辺りを包み込む。
そんな中を僕は独り前へと進む。
何時終りを迎えるか分からない世界を歩き続けて居た。
頭の中まで真っ白で自分自身が何をしているかも分からないまま、ゆっくりと時が過ぎて行った。
ふと、懐かしい声が頭の中に飛び込んできた
「貴方しっかり、何やってるの」
僕はその声に反応するように状態を起こした。
お気に入りのソファでうたた寝をしていたらしい…辺りを見渡しても彼女は居ない。
夢だと理解出来ている。
けれど、今日は4月1日。
「ひっかかったぁ」って言って、どこからかあの素敵な笑顔で現れる事を少し期待した。
春の陽射しが眩しくて溢れ出す涙。
もうよそう…
津波によって数百メートルも流されたソファから立ち上がり、僕は瓦礫の街を歩き出す。
前を向いて。