小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ボツネタ作品!

INDEX|6ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 

『The territory』短編家企画作品として執筆したのですが…



日本題「テリトリー」

短編家企画「紅葉」で書いたのですが…
なぜか、妖怪のいぶき風になってしまいました。
それに、最終的にホラーになってしまいましたので…
ま、どちらにせよ。ボツです。


とある森に、母熊と二匹の小熊が住んでいました。
親子熊は冬眠に備え3匹連れだって、食べ物を捜しに森の奥へと出掛けました。
しかし、いくら歩き回っても食べ物を探しだすことが出来ませんでした。
母熊は仕方なしに、森を抜け里山へと降り立ちました。

そこには柿木がありました。
ほんの僅かばかり熟した柿を母熊は口でもぎ取り小熊達に与えました。
元気いっぱいの小熊達は柿を頬張り、母熊を見詰めます。
まだ物足りないのでしょう。
母熊はその様子を見て、辺りを見回し嗅覚を最大限いかし新たな食糧を捜します。
その時、遠くからほんの少しですが美味しそうな匂いがしました。
その匂いを頼りに母熊は歩きだし、小熊も後に続きます。

しばらく歩いていると、地面が爪もたたない程硬くなり見た事もない風景の場所に辿り着きました。
騒音に満ちたそこには2本足で歩く動物がたくさん居ました。
2本足の動物は、熊親子を見て口々に奇声を発します。
母熊は思いました。
この動物達の縄張りに入っていたのだと…そして、後悔しました。
小熊達を守りきれるだろうかと。

母熊は「グゥー」と低い唸り声をあげ、威嚇し小熊達を守りながらその場を離れようとします。

警戒しながらゆっくりと森の方角へ戻ろうとした時…
2本足の動物の中に、黒い長い筒を持った者が熊親子の前に立ちはだかります。

パン
パン

渇いた音がし、次いで何か焦げたような臭いがしました。
血の臭いまでもしてきた時。
母熊が倒れ、小熊の片方も倒れていました。

残された小熊は、その光景を見て恐ろしくなり必死に逃げ出しました。
母熊も兄弟熊も目の前で殺されたのです。
あんなに、恐ろしい動物がいるとは…
残された小熊は、生まれて始めて恐怖というものを味わいました。
他動物の縄張りに入ったがためにこんな目に会った。
小熊は誓いました。
今後二度と他動物の縄張りには近付かないと…
必死に逃げながら…そう思いました。


そして、深い深い森へと小熊は逃げ帰ったのでした。





それから、長い年月が過ぎ去り…
あの年と同じような猛暑が続いた夏も終り11月に差し掛かった頃。
あの小熊も立派に成長していました。

今年も冬眠の準備をしなければなりません。
しかし、あの恐ろしい年と同じように森の恵みはいくばくも無い状態でした。

それでも、成長した熊は木の実などを食べ我慢強く冬の訪れを待ちました。

そんなある日、道に迷ったのか2本足の動物が熊の住家に現れてしまったのでした。

2本足の動物は熊を見るなり、あの時と同様に奇声を発しましたが、
成長した熊は怯える事なく堂々と立ち向かいました。
2本足の動物はひとたまりもありませんでした。
熊は久しぶりのご馳走にありつけ、なんとかこれで冬が越せる。
そう思っていました。

ですが、この2本足の仲間があの筒を持って捜しに来たのです。
その場の惨事を見た2本足の仲間は直ぐさま筒を熊に向け、
何度も何度も渇いた音を鳴らし続けました…熊の体から音と共に血が飛び散ります。
その血が、近くにあった木を紅く染め上げました。
熊は鮮血に染まるも、仁王立ちし2本足の動物に目を向け唸り声をあげ続けます。
2本足の動物は、「化け物」そう一言呟きました。


猛暑続きだったこの森の木は未だ紅葉の兆しがみえませんでしたが、
熊の血によって、あたかも真っ赤に染まる椛のようでした。



そして…



その後、あの熊の縄張りに近付いた者は誰ひとり戻る事はなかったそうです。
今も、これからも…


おしまい。


作品名:ボツネタ作品! 作家名:槐妖