ミルク金眼
サランジュは、黒い髪に黒い瞳、浅黒い肌をもった、典型的な村人を両親に持った子供だった。
それなのに、産まれたサランジュは、黒い髪は同じであれど、瞳は暗緑色、肌は抜けるように白かったのだ。
男親は不貞を疑い、女親はそのような疑いをもたれる子供を疎んだ。
それでも、自分の腹から産まれた娘を女は愛したが、母親が死ぬと同時に父親は娘を神殿の前に捨てた。
折しもその日は、ルデニアが生誕したと言われる霧の月の2週目と3日。
名前すらもわからない捨てられた子供に、孤児院の年長者はルデニアの子とされるルサランジュシアから名をとって、サランジュとつけた。
それを名付けた年長者は、もういない。
だから、サランジュはそんな名付け親のことなんて何も知らなければ、自分の両親のことを考えた事すらなかった。そして、両親が子供を捨てた今、サランジュの背景を知っている者などいない。
それでも、自分の名前となったルサランジュシアのことだけは特別だった。
日が昇る、日が暮れる、朝の食事に、昼の水分補給、夜の食事、なんにせよ、祈るおりには、ルサランジュシアに祈った。
この孤児院は、神殿に併設されているだけあって、信仰心にあつく、何のおりにせよ祈る。
それに意味があろうとなかろうと、習慣として、慣習として祈るのだ。
ルサランジュシアは、ルデニアの一番目の子にして、最後の子。
ルデニアが豊穣の女神なのに対するように、ルサランジュシアは終末の女神。
自分の腹から産まれた絶望にルデニアは涙を流し、同時に与えられるだけの希望を与えた。
よって、ルサランジュシアは、終末と希望、豊穣と衰退。よって必衰を現した。
それだけに、王侯貴族に成金貴族には愛されない。
それでも、サランジュにとっては特別な神だった。この貧しい生活も、時がたてば裕福になるのではないかと。