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遊佐 はな
遊佐 はな
novelistID. 16217
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政府公認秘密機構「なんでもや」。

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神さんの大きな声が部屋中に響き渡る。
その声と同時。
瀬戸さんがボクの頭を床に押し付けんばかりに手で押さえつけ、そうしてさっきまでボクが横たわっていたソファの影に隠れた。
次の瞬間、風を貫くような甲高い音が次々と部屋の中へと飛んでくる。
「くっそ」
頭の上で瀬戸さんが小さく舌打ちする。
「おいゴッド。敵さんは何人だ?」
ボクの頭越し、背後を壁にあずけた神さんに瀬戸さんが問う。
「俺が5、てめぇに8やる」
暗号めいた言葉に、瀬戸さんは苦笑した。
「へいへい。神様の言うことには逆らえませんよ」
嫌味くさい言葉を吐きながら、瀬戸さんはズボンの後ろポケットから何かを取り出した。
「銃???」
瀬戸さんの手の中にあるものにボクは驚き、そしてそれから離れるべく立ち上がってしまった。
「おいバカ!」
慌てた瀬戸さんに手を引かれ、再びソファの影にかくれる。
瞬時、ボクの頭上を何かがすばやく移動し、そうしてそれが向こうの壁に突き刺さった。
「拳銃???」
弾だ。
本物なんて見たことない。
けれど、わかる。
壁にくっきりと残っているのは銃創だ。
「瀬戸さん!何がどうなってるんですか?」
ボクの頭の中はパニックだ。
逆にこの状況でパニックにならない奴のほうがおかしいだろ。
「おいアオ」
少し離れた場所にいる神さんが誰かに話しかけた。
アオ?
「カッパの横にいるお前だ」
ボク?
瀬戸さんは「カッパ」と呼ばれたことに少々苦笑いを浮かべている。
「お前は今日からアオだ」
ソファごし、神さんはゆっくりとした口調で話し始める。
「俺が拾ったもんだ。俺が名前をつけるのは当然の権利。文句は言わせない」
神さんはそこまで言うと、突然すっと立ち上がった。
「その命、俺が貰い受けた」
半身振り返った神さんに、太陽のオレンジ色が降り注ぐ。
「きれい」
言葉がポロリと零れ落ちる。
「頭、下げてろよ」
瀬戸さんはボクの頭を2,3どなでてからその場に立ち上がった。
その次の瞬間、頭上では今まで聞いたことのないような爆音が響きわたった。
ボクは恐怖のあまり、耳を両手で押さえ、頭を床に押し付け祈るような形で体を硬直させた。
しばらくすると、その爆音が止み、ボクは恐る恐る顔をあげた。
部屋には先ほどまでの爆音を現すかのように、無数の銃痕が見てとれる。 ボクはあまりの出来事に放心状態だ。
「トントン」
不意にドアをノックする音がする。
ボクの体は傍目からもわかるように大きく跳ねた。
その横を、瀬戸さんがまるで何事もなかったかのように鼻歌まじりで通り過ぎる。
「郵便です」
ドアの向こうからは男性の声がする。
「はいはい。今開けます」
瀬戸さんが素知らぬ顔で扉を開いた。
「受領印お願いします」
郵便局の制服を着た男性がすっと小包を差し出した。
「ほいほい」
瀬戸さんはなんの変わりもなく差し出された受領書にサインをしている。 何かおかしい。
そもそも、あんな銃撃戦があった直後に郵便配達なんか来るのだろうか? よく見てみると、郵便局員は手には白い手袋、帽子を目深にかぶり表情はおろか、その顔までひたすら隠している。
「ご苦労さん」
瀬戸さんが郵便局員を見送り、その扉が閉まると同時、ボクは神さんが立っている窓付近へダッシュした。
おかしい。
おかしすぎる!
もしかしたら先ほどの仲間が変装して爆発物を持ってきたかもしれない。
ボクは窓からじっとその配達員がビルから出てくるのを待った。
「なんだこれ?」
背後の瀬戸さんの声に驚きボクは慌てた。
「瀬戸さん!それ爆発物かも!開けちゃ…」
マズイという言葉を飲み込んだ。
包みはすでに開封され、いつの間に移動したのだろうか。
ボクの隣に立っていたはずの神さんも、瀬戸さんとともにその包みを覗きこんでいる。
「んぁあ悪ィ。今のうちの職員…てぇわけでもないんか?説明難しいな」
苦笑いを浮かべる瀬戸さんの隣で、神さんは包みに入っていたのであろう小さな黒いものを手にしている。
「マイクロチップ…」
神さんが呟くと、今度は瀬戸さんが包みの中から一枚の紙を取り出した。 「カマ…はぁ?」
紙に書かれている文字を読み上げ、瀬戸さんは首を傾げる。
「察するに、このチップを誰かに届けろという意味だろうな」
神さんは冷静に言いながら、本日3本目となるタバコに火をつけた。
「カマてなんだよ?新宿三丁目のカマバーにでもいけってんのか~?」
瀬戸さんは手にした紙を逆さにしたり裏返したり角度を変えたり、あらゆる方向からその紙を眉間にシワを寄せながら眺めている。
「さぁな。ただ言えるのは、モタモタしてる暇はないということだな」
神さんはそう言って再び銃を構えた。
「しっかり俺についてこいよ」
そういう瀬戸さんの手にも再び銃がある。
「走れ」
神さんの掛け声とともにボクたちは走り出した。 まだ知らぬ明日へと。