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鏡裏@のべりすと
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novelistID. 9876
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小人さんと13番

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ある夏の日



アイスグリーンの短髪をワックスで立てて帰り道を歩く背の高い少年。
片手をスラックスのポケットに突っ込み、もう片手でMP3プレイヤーをいじっている。
少々たれ目で細目の彼はいつも通りの生活を送る。
ただ、傍から見たら違和感のある部分が一つ。

「あっちぃ~」

胸ポケットから覗く小さな人だった。

「暑くて死んじまう~」

胸ポケットから飛び出した上半身はベランダで干される布団のよう。
小人の服は半袖のシャツの胸元に細いリボン。髪の毛は胸ポケットの貸し主である少年が緑がかっているのに対し小人は濃い黄色だった。少し長めの黄色い髪を頭の後ろ、毛の長さの足りない馬の尾のように結んでいる。

「暑い暑い暑い暑い~~~あ~つ~い!!」

ぽふぽふ、と音を立てながら少年の胸元で暴れる。
少年はMP3プレイヤーに向けていた視線を胸元におろす。

「ちっこいの五月蝿い」

そういって小人の頭をつつく。2、3回つつく。

「いだっ、いっ、おまっ・・13番! 俺様が痛ぇって言ってんだろぉ!!」
「ちっこいのが五月蝿いのがいけないと思う」

頭を小さな手で押さえながら涙目で怒る小人に少年はヘッドホンを外し首元に回す。

「大体な、ちっこいのがいつまでも俺の胸ポケットにいるからだろ・・・俺も暑いんだぞ」
「うぅ・・・しかし、俺様はこの景色が気に入ってるんだから仕方ねぇんだもん」
「ちっさき者故の憧れかぁ・・・・・・」
「う、うるさいっ! 何度目の会話だよっ!」
「会話を持ち出してるのはちっこいのの方だろ・・・」

このあと五分間13番と呼ばれた少年と小人の低レベルな言い争いは続く。


「ふぅ・・・」
「はぁ・・・」

二人(?)のため息が重なり言い争いは終わった。

「暑いな」
「うん」
「家着いたら風呂だな」
「そうだね」

彼ら(?)はうんうん、と頷く。

「俺様は水風呂がいいぞー!」
「そうだね、俺も水浴びたい・・・」

ぽふぽふと少年の胸をたたき主張する小人ともう目の前に迫る家の鍵をカバンから手まさぐりで探す少年。

「・・・ついた!」
「鍵鍵ー」

少年は鍵をドアノブに差込み扉を開く。



これが彼と小人の夏のワンシーン。
日常だ。


「「 ただいまー 」」