スコーピオン
その翌日、スコーピオンをひきずっていって
婚礼を上げることを会議で告げたら
うんぬんカンヌンけしからんと
いろいろあったが
まぁ省略するとなんとかなった。
黒地と白いひげの男が
特に騒ぎ立てるので
(完全な保守派を気取るやつらだが)
じゃあ、ってことで
はったり半分、確信半分をもって
ああ、まったく関係のない話だが
私の父が死ぬ時に
私の顔をみて父が指した黒茶碗な、
なにか細工があるらしくてな。
と、言ったら
急に押し黙ってふたりして
目を丸くして私を見る
拍子抜けするほどあからさまだな、
それでな、調べたところ
長くかかったが、底の方に
小さな穴があってな、
そこをほじくったら
父と母が毎夜、薬だといわれて
飲んでいたものの欠片が出てきた。
どうも妙なんで、今、
薬を知る者に調べてもらっている。
と、それだけ言ったら
いきなり青ざめて黙ってしまった、
そこでひと押し、
どうだ、それだけけんけんして
おまえたちは
最近疲れているようだし
そろそろ暇をもらったら?と言ったら
そ、そうですね
実は最近、と黒地が汗だくになりながら震え言い、
それを見た白ひげが
わなわなと怒りの眼をした後
無言で数秒何事かを考え、
ついに、まぁ、そうですな
私も年老いました、怒りっぽくなっている
暇をもらった方がよろしいのでしょうな、と
言ったので
快く暇をあげたのだが
それがどうも周囲に妙な具合に効いたらしい。
そのあとで、スコーピオンと私に
難癖付ける人間はそう目立っていなくなった。
それは、スコーピオンを擁護する方が
多かったのもあっただろう。
***
私が発言した直後から
思案にくれていた叔父は
会議中、ずっと無言で
白海は、というと
婚礼だのなんだの
そんなことはむしろどうでもいいことのように
斜め後ろの方で憮然としていて
目を白黒させているスコーピオンを
じろじろ人目もはばからずに見ていた。
そして
部屋に引き揚げる際に、
茫然としているスコーピオンに
「二度と逃げるな。
私はお前がこうしてもどるまで
許す気はなかったのだぞ」と
わけのわからないことを言い
ぷりぷりしているし
叔父は叔父で
「まぁ男色なんざ、珍しくない
なんとかなる」と
やけに、分かっているんだか
いないんだか、やけに陽気に言う、
スコーピオンは一晩中
私がいろいろしたから
疲れ果てていたし
その上、朝になってうとうとしていたら
私が縄をつけたまま
自分を会議にひっぱりだして
婚礼だのいったのも
かなり衝撃だったらしい
その後はもう殆ど
なんの考えも思い浮かばないようで
ぼおっとした目をして
私を見たり、
怒った顔をした白海や
笑っている叔父を見たり
自分の手をつなげている縄を見たりしていた。
だので
「うん、お前は私のそばにいなさい」
と言ったら
笑っているんだか、泣いているんだか
変な顔で
ともかく確かにうなづいた。
二回ほどがんばってうなづいた後に
私は居ていいんですか、というから
いまさら何が言いたい、
私はお前に居てほしいんだよ、と言った
ついにぽろぽろと泣いてしまった。
まったく、恋と言うのは
手に負えない。
本当に自分でさえ手に負えないんだから
困ったものだ。
***
夜になっても
まだ興奮冷めやらぬらしく
幾度か涙目になるスコーピオンに
最初にお前を黒地のところへやったのは
すまなかったね、
あいつが反対勢力を
まったく危険な武力とともに
のばしているらしいのは知っていたから
なんとか監視をしたくてね
お前をやって見に行けばいい、と
浅はかに考えてしまった。
だいぶ苛められただろう、と言ったら
「あなたは私が守ります」と
それだけは強い声音で言う。
お前は弱いくせに、ほざくなよ
と言ったら、
一応強いつもりです、
鍛錬もします、
もっと強くなります
と、顔を赤くして怒った。
うん、私以外には
強いよな、と笑ってしまった。