町内会附浄化役
渦巻いていた弥無に向かって、御幣島の神が咆哮する。放たれた衝撃は空間を突き抜けて弥無に届く。ジェットコースターの速さに追いつけなくなった弥無はとまどうように宙をただよう。
「斎月、もう一度!」
御幣島の神が叫ぶ。
「これがエゴだというのなら、否定しない。祥も智穏さんも大事なの。だから守りたい! 私にそれが出来るのなら、精一杯やるだけ!!」
御幣島の神が大きく飛躍して、たゆたう弥無を捕らえる。大きく口をあけ、熱い息をまき散らしながら弥無に牙をたてた。弥無はぱしんと硬質な音を立て、砕け散る。舞い散る弥無のかけらは光を乱反射してきらめいていた。
智穏は額から血を流して、肩を押さえていた。それでも顔には頼りない笑顔を浮かべていた。
「だいじょうぶですかっ!」
斎月が駆け寄ると、智穏はさらに笑みを深めて言った。
「うん、斎月ちゃんのおかげで助かったよ。ありがとう」
「そんな……」
「あいつだろ。」
青ざめた顔で智穏を支えていた祥が、低い声で言った。
「あの女だ、そうだろ、斎月っ!」
斎月はとっさに何も答えられなかった。
「あの女、許さねえ」
歯を食いしばってそう言った祥は、とてもつらそうに見えた。