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ひざむらい
ひざむらい
novelistID. 15984
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ファンレター

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大橋様

水沼健吾です。のぶちゃんなどと甘ったらしい呼び方をして、大変失礼致しました。
しかし、随分とひどいですね。待ち焦がれて待ち焦がれて、ようやく手元に着た手紙なのに、あんな内容とは、今度は私の方が卒倒しそうでした。思い起こせば、大橋様の方から私に詰め寄ってきたのでしょう。人の心は変わっていく、女心は秋の空とはよく言ったものです。いや、でも、そういうわけではないかもしれません。よくわからなくなってきました。私の家の鍵を魚にあげるなんてあんまりです。幸か不幸か、魚すら私に興味がないようで、いまだ魚からの訪問はありません。もしや、私の執筆した本も、私がデザインしたけんちゃんTシャツも、ビリビリに裂いて捨ててしまったのでしょうか。なんだかそんな気がします。そんなことを想像するたびに、私は胸が張り裂けそうになります。どうか、家宝として大事にしてやってください。家宝といえば、大橋様から手土産としていただいたルービックキューブですが、神棚に祭ってあるなんて書いたのは、それ程大事にしているということを伝えたかっただけで、ちゃんと毎日ガチャガチャといじっております。昨日なんかは十時間も遊んでいました。なかなか面白いです。お蔭様で、少しは頭が良くなった気が致します。これを契機に学問の道に進もうとさえ思いました。ええ、私は今、大変退屈な日々を送っています。大河ドラマの撮影に忙しいなどというのは嘘八百で御座いまして、どこからも仕事の依頼がない有様で、仕方がないのでまた本を執筆している最中なのです。来月あたり、「天才俳優・水沼健吾のすべて」という本が書店に並ぶかもしれません。人生を賭けて執筆していますので、ベストセラー間違いなしだと自負しております。是非とも購入してくださいませ。決して宣伝しているのではなく、大橋様にお読みいただきたいのです。なんならルービックキューブのお返しに、差し上げましょうか。ええ、差し上げますとも。今度郵送させていただきます。私への見方が変わるかもしれません。今度は逆に、私が大橋様のお宅へ訪問させていただいても良いでしょうか。
汚名挽回といきたいです。

水沼健吾

作品名:ファンレター 作家名:ひざむらい