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ひざむらい
ひざむらい
novelistID. 15984
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水沼様

お返事が遅れまして申し訳ありません。また、先般はお宅へお邪魔してしまい、大変失礼致しました。いきなりですが、のぶちゃんと呼ぶのはおやめになってください。気持ちが悪いです。吐き気がするし、卒倒しそうです。お願いですから、そんな馴れ馴れしい呼び方はおやめになってください。私は水沼様のお宅へ伺い、生で初めて水沼様のお姿を拝見したとき、回れ右して帰ろうかと思いました。ここ半年くらいは一歩も外へ出ていないかのような青白く不健康な顔ですし、死んだような目をしていらっしゃいますし、なんだか家中が煙草の臭いで充満しているご様子ですし、全くやる気のないような寝巻き姿で登場ですもの、私は完全に興醒めてしまいました。とても仕事に忙しいという雰囲気ではありませんでした。しかしながら、回れ右して帰るには、私の方から押しかけておいて失礼ではないかと思い直し、勇気を最大限に振り絞ってお邪魔させていただいたのですが、三十分が限度でした。耐え難い苦痛の時間でした。水沼様は何を思ってるのかオロオロしていますし、ちっとも会話は弾みませんし、せっかく持っていった手土産のルービックキューブも全く興味を示してくれませんでした。私は、水沼様は頭が弱いのだと思い、柔軟な思考ができるようにとルービックキューブを選定してお持ちしたのですが、神棚に飾るなんてどういうことなんでしょう。まるでもう、幻滅です。水沼様は恋がどうとか書いてらっしゃいましたが、そんなものはおやめなさい。みっともないです。恋をしている水沼様なんて気持ちが悪いだけです。送っていただいた手紙にあらぬ物が同封されていましたが、どうかご安心ください。携帯電話の番号が書いた紙はこれでもかというくらいビリビリに裂いて捨てましたし、合鍵とやらも川に向って思い切り投げ捨てました。鍵を拾った川魚が水沼様の家を訪問するかもしれませんが、そのときは可愛がってやってくださいませ。
それでは、お元気で。
さようなら。

大橋信子
 
作品名:ファンレター 作家名:ひざむらい