緑の並木道 4
真剣に相槌をうってくれる奴に感謝した。
「こないだ…って言っても結構前にその人に告白されたの。あまりに突然だったし、すごい動揺して…なのに、その人平然としてて。動揺してるのは私だけなんだとか思ったら自分が馬鹿みたいに思えて…思わず、断っちゃった」
私が発言をしている間に、奴は一瞬瞬きをして、それからうつむき加減になり固まった。
奴は、気付いてくれたのだ。私のこれだけの言葉で、私が今奴の前で懸命に話している“好きな人”が、奴、三澤葉流だと言うことに。
しばらく沈黙が続いた。私は次の言葉をどう切り出そうか迷っていた。今すぐにでも言いたかったのに、唇が上手く動かない。照れて邪魔をする。
そんなことを考えていたらいきなり奴がたんかをきったように早口で喋りだした。ものすごく怒っている気がするのは気のせいではないだろう。
「そっちから見たら平然としているように見えたかもみしれないけど、こっちはすごく緊張して…」
言い終わらないうちに私はそれを手で制した。奴はまるで獲物を捕らえる寸前でそれを見失った獣のように怒っていた。無理もない。
「私に…言わせて」
そう言って静かに手を下ろしたが奴はまだ怒った顔をしている。
「私、三澤君のことが好です。・・・本当は多分、中学の時から好きだった。三澤君は私をまだ、好きでいてくれる?」
「…決まってんじゃん」
ポケットに手を突っ込んで遠くを見つめた奴はふてくされたように薄紅色の唇を噛んだ。奴にはまるで似合わないほど、顔が真っ赤になっていた。