鬼になったぼく
「まさか、おまえが四十年後の母親の家に忍び込むとはね。おれの計算違いだった」
青鬼はあきれたようにため息をついて、
「実はな、おまえの母親に災いの種をまいたのはこのおれなんだ。だが、ばれたら災いの力は消える。帰してやるよ。その代わり、親不孝はするなよ」
と言って、ぼくの角をぽきんと折った。
「うん、約束する」
と、ぼくが答えると、青鬼はにっこり笑って消えていった。
「おや、お兄さんは?」
お茶を運んできた母ちゃんがぼくに聞いた。
「うん。用事があるから帰るって」
「まあ、ろくにお礼もしてないのに」
「ぼくが母ちゃんを大事にすればいいって」
ぼくはもう一度人間になった。