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この世にあるすべての青をみわける目

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 やがてふたりは世界の果てにある、小さな家にたどりつきました。フィルはもう十九歳になっていましたが、天使のフィルはまだフィルの守護天使でしたし、あれ以来、どんなけがをすることもありませんでした(こぼれてしまった片目だけは二度ともどりませんでしたが)。
 小さな家には世界のはじまりから今までずっと生きているんじゃないかとフィルが首をかしげたくなるようなおじいさんと、おじいさんの守護天使がしずかに暮らしていました。
 おじいさんは絵かきでした。この世にあるすべての赤を描く絵かきでした。そうしておじいさんの守護天使には片方のつばさがなく、左うでは肩のところから、ただ白いそでがぱたぱたとゆれているだけでした。
「ぼくとフィルをここに住まわせてください」
 フィルがそうたのむと、おじいさんとおじいさんの守護天使はもちろん、とふたりに部屋をひとつくれました。それは小さな家の二階の部屋で、大きな窓からはいっぱいに光がさしこんで、季節と時間と天気ごとに何万とおりにも色を変える空と海を見ることができました。
「Lふたつのフィル、青だ」
「そうだね、フィル。青だ――すごいね、青だ、ぜんぶの青だ……」
 つまりここが、ふたりの家だったのです。

 フィルは小説家になりました。この世にあるすべての青を書く小説家になりました。そうして天使のフィルは、今でもまだ、フィルの守護天使なのでした。