小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

朧木君の非日常生活

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 


その少女は呆然と立ち尽くす俺に言った。
無邪気な笑顔で。
「わたし、初めて人間を食べたの。あなたは美味しいの?」
戦慄した。全身が総毛立った。俺は、この少女に恐怖した。
この少女が言ってることが本当のことだとすぐに分かった。
顔が嘘をついていないのだ。もし仮にこれが嘘だとしたら最優秀主演女優も顔負
けの演技だ。
「ねぇ…答えてよ」
少女は続けた。
今やこの少女の笑顔は俺に恐怖しか与えなかった。俺は恐怖に身を覆われ、面白
いくらいに体が言うことを聞かなかった。
金縛り顔負けだ。
全てが顔負けだ。
「さぁ…ニートだしまずいんじゃね?」
俺の体は恐怖に身を覆われながらも、声帯だけは機能したようだ。
我ながら天晴れな声帯だ。
しかも軽い冗談も交えるなんて我ながら凄い。拍手喝采、称賛に値します。観客
がいたらスタンディングオベーションだろ。
「食べてもいい?」
少女は笑顔からうって変わって、キョトンとした純粋無垢を思わせる表情で聞い
てきた。
ここで断っておきたいのだが、純粋無垢と言っても全身ほぼ血まみれ、闇に爛々
と深紅の瞳が輝いているんだから、純粋に恐怖を感じた俺も無垢なんだよ?
「食べるって…食うといより、喰うだな…」

拝啓、誰かさん。
ニートですみません。言葉遊びの末、喰われて償います。

「んじゃ頂きます」
少女がぱくっと小さな口を開けた。しかし、ここで俺はふと違和感を覚えた。ちょっとした違和感。だけど重要で重大で重視しなければならない違和感。
俺は、少女の小さく開かれた口を見た。
そこには異常に発達した八重歯が…否、牙が…牙が…

――牙がない?

人を喰うと聞いてから、なんとなく吸血鬼的なのを想像してたけど、吸血鬼って
牙みたいなのがあるよな?
んじゃこの子何なんだ?
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!!お前は一体何者なの!?吸血鬼じゃないの?そ
れに俺は世界で一番美味しくないで有名なんだ!」
「美味しくないの?…まぁ今はお腹いっぱいだからいいか。吸血鬼は美味しいの
?」
「吸血鬼の味なんて知らねーよ!!!! 働かざる者食うべからず、ですよ! うまいな、自画自賛です」
働かざる者=ニート
 働かざる者=女の子
この二つをかけてみました。
これぞ俺の力。この人ではない何かを前に自分のペースを引き戻しつつあるという俺の力だ。
「ていうか、もうそろそろ何か教えて頂けませんか?」
俺は、なんていうか凄まじき適応能力を発揮し、この少女に慣れてきていたので思い切って聞いてみた。
「何かって?」
この女の子は理解力が足りないのか?
「んじゃ、種族or種類or人種は?」
また聞いてみた。三択だから答えてくれるだろう、望みをかけて。
「?」
くっ。手ごわいな。
「んじゃ、名前は?」
名前くらいあるだろう、女の子なんだから。女の子なんだからって理由も分からないけど。
「名前なんてないよ」
名前がないときたか。
ならば・・・・・・最終手段。
「んじゃ、バイバイ」
俺は、回れ右をして一目散に駆けだそうとした。
「待って」
はい、何でしょう。くっ、ここで待ってしまうなんて何て俺はお人よしなんだ。
「あなたが聞きたいことが分かった。あなたは人間。それじゃわたしは?ってこと?」
イエス! 理解するまで何テンポずれているんだい?
「ぜひ教えて頂きたい」
俺は、完全に少女と向かい合い答えを待った。待つというほど楽しみでもないけど、単純に気になるだけ。これニート魂、ノット、俺魂。
「鬼。わたし達はそう呼ばれている」
「鬼?」
「鬼」
俺は、少女の言葉をもう一度頭の中で反芻した。
『鬼』
「鬼ってあれか? 昔話とかでよく出てくる・・・・・・代表作でいうと桃太郎あたりかな?」
にしてはずいぶん可愛らしいおにだな、おい
「まぁ、いいや。俺は人間。君は鬼。んじゃさよなら」
アディオス、鬼。また会う日まで・・・・・・・・・・・・会いたかねぇけど。
「待って。一人は嫌」
「待って。俺は二人が嫌。んじゃ」
俺は、普通の人間なんです。鬼と二人暮らしなう、なんてツイート出来る訳なぇだろ。
俺は、帰宅を決意し、家に帰ろうとした・・・・・・その時。
「いっっっっっっっっっってえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
腕がもげるんじゃないかっていうくらいの激痛右腕にが走り、目を向けた。
そこには、か細い少女の腕があった。
俺の腕を握っていた。
握りつぶしていた?
この際どうでもいい。
家に行く前に救急病院行かないとダメかな?
完璧に折れてますよこれ。
「行かないで」
「仰せのままに」
そっか、鬼って怖いんだよね。自意識過剰だった僕が悪かったです。
みなさん、鬼を見かけたら注意してくださいね。
 
作品名:朧木君の非日常生活 作家名:たし