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ぐるぐる廻る、僕らと僕と・・・。

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それにつられて僕もなんだか眠気が強くなってきてしまったではないか。
「………………………………おっと」
一瞬だけ夢の世界へ旅立ちかけてしまった。
危ない危ない。
生まれて初めて立ったまま寝るなんていう荒技をするところだった。
「いかんいかん。」
そう言って僕は、軽く頬を叩く。
否が応でも目を覚まさなければ。そうでなくては死ぬというルールも作ろうか。
そうすれば僕も、もう少し必死になるかもしれない。
……………………。
いや別に寝ないことに命懸けたいわけじゃないけど。
「うぉおーい!、こーちゃん!。準備オッケーかぁ〜?」
僕の目の前にいるやつは、わざわざ手を大きくぶんぶん振って僕に話しかけてくる。
「声大きいよ聞こえてるよ近所迷惑だよ」
「む、別にここは我が家ではないから近所ではないっしょ」
「そんな細かいこと気にするなよ。人目についたら面倒だろ。それに近所って言うのは近くの家って意味で別に自分の家の近くである必要は…」
「むー、分かった分かったよ。もうっ、こーちゃんは真面目さんなんだか」
そう言ってそいつは腰に手をあて、大きく(たいしてない)胸を張る。
まぁ僕としては、大きすぎるよりかは遙かに好みではあるけど。此処だけの話ね。
そのひよこ柄でもなくてニワトリ殻でもなくて卵柄のパジャマでそうやってると、どうにも子供っぽく見えて、とても僕と同じ年には見えない。
「というかそのこーちゃんってなんだ。僕としてはちゃんづけは女っぽくてあんまり歓迎したくないんだけど」
まるで小学生みたいではないか。
「えー、いいじゃんこーちゃんかわいいじゃん。こーちゃん、お顔がとってもキューティクルだからすっごく合ってると思うよ」
ぐぁ。
このやろう。
「うるさなぁ、もう。それ結構気にしてるんだから直で言わないでよ。言うなら影で言ってくれ」
「陰口言われてもいいの?」
「僕に聞こえなきゃいいの」
「ふーん」
「分かった?、そーくん」
「うきゃ!?。」
そいつは僕の言葉に軽妙に跳ねる。
相変わらず見てて愉快なやつだと僕は安心してみた。
「うわー、うわー。こーちゃん酷いよー、鬼だよー、此処に悪魔がいるよー。かわいい女の子に向かってくんづけなんて法律違反だよー」
自分はやっていいのか。
というかどこの国の法律かものすごく気になるところだ。
冗談だけど。
「それを先にやったのはそっちだろ。分かったか?、僕の気持ち」
骨に身に染みやがれこのやろう。
この際だから自分でかわいいとか言ったのは放置だ。
「うー、うー」
変な泣き真似。
なんか動物のうなり声みたいだ。
「分かったよぉ、そうするよぉ。こーくん」
「うむ、分かればよろしい」
「でもこーくん」
「ん?」
「かわいい女の子にはちゃんづけならさ、かっこいい男の子にはくんづけってことなんでしょ?」
「うん?」
それはものすごい差別の始まり気がする。
しかも限定表現。
まぁ、どうでもいいことなので、此処は聞き流しておこう。
「うん、それで」
「でもさぁ」
「うんうん
「こーくんはかわいい男の子だよ」
「うるせぇ!」
思わず怒鳴ってしまった。
だから何度も言うが気にしてるんだ僕は。
「いいからもう、さっさと始めようよ。このままだと朝ご飯間に合わないかもよ、ももちゃん」
「あー、そうだねこーくん。こーくん、なぎちゃん起こさないといけないもん」
「そうそう。たまには自分で起きて欲しいけどね」
「あははー、嘘だー。だってこーくん、なぎちゃんワショーイだもんね」
「…………………」
ごめんなさい。
どういうことなのかさっぱり分かりませんでした。
「分かった分かった。とにかく早く始めよ」
「おっけー」
いや、だから。
そんな1メートル半ぐらいの距離で大声ださなくてもいいから。
・・・・・・・・・・・・・まっ、どうでもいいんだけどね。
「はいはい、いつでもどうぞ」
そう言って僕は、軽くつま先を上げる。
こう、動きやすいように。
「よっしゃー、いっくぞー!」
そう言いながらももちゃんは、僕に向かって気軽に一歩踏みだし、

僕の右眼に向かって、ナイフを突きだした。

「っ」
いきなり目か。
それは予想外だった。
僕は、それをどうにかよける。
かっこよく顔を少し逸らしてさけるという感じではなく、後ろに下がって少し間を空ける感じで。
つま先立ちだったので、体重移動が滞りなく始動した。
「ひゅおー」
だけどももちゃんはそう言いながら、後ろに下がった僕にさらに踏み込んでくる。
今度は姿勢を低くして、僕の左胸辺りを狙って。
僕はそれを、右側に傾くようによける。
正直なところ、今のは危なかった。
姿勢を低くしたせいで、ももちゃんが持つそれほど大きくないナイフが、ももちゃんの体に隠れて、一瞬僕の体のどこを狙うのか分からなかった。
万事休すではないけど、冷汗ものだ。
「てぇー」
ももちゃんは僕によけられた姿勢のまま、左手に持つナイフを逆手に持ちにして、僕の方に押しかかるようにってうおぁっ。
「くっ」
僕は咄嗟に体が傾く向きを後ろよりにして、ももちゃんのナイフの一閃の軌道上から逃げた。
今のはさっきより危なかった。
脇腹側から心臓狙ってくるとはお主もなかなかやるのぉ。
僕は、心の中でのみ余裕を気取りながら、バックスッテプでももちゃんとの間を大きく開げる。
もちろん、逃げる際に対しても、ももちゃんに背中を見せるなんて馬鹿な真似はしない。
僕としては、死ぬときはその相手の顔を見て死ぬと決めているのだ。
今咄嗟に思い付いたことだけど。
実際はただ、警戒してるだけだ。
「………………うーむ」
それにしても、ももちゃんの動きは相変わらず無茶苦茶だ。
ナイフ専用の戦闘術なんてものは聞いたことが無いが、それでも技の型のような、どこか枠にはまった動きをしてもいいものを。
現在ももちゃんは、僕に避けられた際に出来た体の体制のブレを立て直し、卵殻のパジャマの裾と肩より少し長いくらいの髪の毛を揺らせながら、ナイフを持ってよっこらせとしている。
……………うーん。
なんだか緊張感の薄れる行動だ。
警戒を解くわけじゃないけど、どうにもこうにも。
と僕は思っていたんだけど。
だけど、次の瞬間には。
ももちゃんの体が、跳ねた。
「!!」
ももちゃんは、僕との間に開いた間をすぐにうめ、今度は頸動脈を狙ってナイフを横に振った。
無駄のある動きじゃ、ないんだけどね。
むしろ、無駄はまったくないって感じだ。
「うっ」
僕は、頭から後ろに仰け反るようにそれを避けておおぉ!。
後ろ髪が少し切れた。
天然散髪屋さん。
ただし命がけ。
絶対売れないな。
あ、でも店員さんはかわいいからもしかすると…………………ん?。
どうやら風にのって、ももちゃんが使った、シャンプーかリンスかトリートメントの匂いが漂ってきたようだ。
良い香りなんだけど、それを堪能する余裕はとても僕にはない。
ちょっと残念。
とにかく、また間を開けないとって…。
「うわっ」
足。
脚。
あーし。
アーシ、を。
踏んでる踏んでる踏まれてる。
別に喜んでいるわけじゃないよ。
僕はそんなマゾじゃない。
僕の右足の上にももちゃんの左足が乗っている。