【未】少女はヒロインになりたかった【過去作】
┗どこからが大人か。
「へぇ、じゃあ先輩方は幼なじみなんスか!」
「まあ、ただ家が隣なだけだけどな」
「それでも羨ましいッス!自分、近所の歳の近い奴がいないんですよ〜」
彼らは案外意気投合したらしく、話に花を咲かせていた。……真知を真ん中にはさんで。
「(……なにゆえ?)」
「あとは、そうだなー。いつも御厨さんに遊んでもらってたな。ほら、シンヤも一緒に、よく御厨さん家に行ったよな!」
不意に話をふられた事にか、それとも、その話題にか。
真知は一瞬ビクッとした。
「あ、ああ。そうだね」
「懐かしいなー、御厨さん」
「このあいだ結婚したよ。あの人」
真知がそう言うと、雪弥は目を丸くした。
「……マジで?てか、なんでお前が知ってんの?」
「呼ばれたんだよ。花嫁さんが従姉だから」
『へー』と言って、雪弥の興味は無くなったらしい。タイミングを見計らったようにして、翼が『自分こっちなんで。さようなら先輩方!』と言って、山の方へ行った。
「御厨さん……か。そんなに格好良い人じゃなかった気がする」
「失礼だな。…まあ、もう29だしね」
「そんなに上だったんだ?中年じゃん」
雪弥がククッと喉を鳴らした。
「物知りだったよなー。あの書斎の本、今なら理解出来んのに」
「行ったら?『雪弥君とシンヤ君も大きくなったんだろうね』って言ってたし」
「そっかぁ」
「うん」
一家団らんの声、楽しそうな会話。
どこかの家から漂うカレーのニオイに二人のお腹がグゥと鳴り、顔を見合わせて笑った。
「近いうちに行くか、シンヤも誘って」
「そうだね」
蛙と少女と少年と中年編
終
作品名:【未】少女はヒロインになりたかった【過去作】 作家名:木白