メギドの丘 三章
「奏さん! 結さん! ・・・・・・何が起こっているんですか!? あの歌ですか!?」
しかし、朔夜の悲痛な叫びは二人に届かない。
二人に届いているのは悲しみの悲劇の歌だけなのだ。
と、その時、朔夜は一つの違和感に気付いた。
些細な違和感が重大なものへとつながって行く感覚。
決して見逃してはならない感覚。
『光』の能力者の朔夜だからこそ気付くことが出来た違和感。
(・・・・・・星の数が減ってる?)
違和感は確信へと変わって行った。
そして確信すると同時に朔夜は気付いた。
(・・・・・・あの歌、星の光のエネルギーを変換しているんですね)
けど、朔夜には全く持って歌による被害は、ない。奏、結のように苦しめられることもない。朔夜の中でバラバラだったピースが次々と合わさって行った。
(光・・・・・・光を消して攻撃へと変換しているということは・・・・・・ッッ!)
朔夜は、右手で何か棒状のものを握るようにし、神経を集中させた。
繊細な脳の計算、伝達、変換、全てが電気の速さではなく光の速さで処理されていく。
人間のレベルを遥かに超えた力。
光。
朔夜の周りの光源体が急速に光を失っていく。無論、月、星も例外ではない。
さながら光の剣。
それが朔夜の手中に出来あがっていた。
「奏さんと結さんを解放してください!」
朔夜がそう叫んだ瞬間。
光量が一瞬にして増幅。拡散。そして、収束。
目標を一瞬で貫き爆散した。
「やけにあっけない精霊でしたね・・・・・・・・・・・・ッッッ!!!!」
そして、目標の消滅と共に世界の崩壊が更に進んだ。
最初から、それが目的だったのかのように。
自らの命を賭してまで世界の歯車を狂わせに来たのかのように。
あの悲しみの歌は死にゆく自分へささげた歌だったのだろうか。
そう。