メギドの丘 二章
窓際の中央に位置する椅子に体躯を構えた、五十代後半の男、ローマ法王が沈黙を破った。
「第二、第三のラッパが立て続けに鳴らされた。そして、第四のラッパ『天照』が鳴らされる時、世界崩壊の鐘の音が鳴らされる」
それに対し、十代半ばの少年、最後の預言者が答える。
「はい、仰る通りです。しかし、ここで一つの問題が発生しました・・・・・・日本支部の 神谷当夜。彼はアタナシウスの予言書に記されていない。要するに我々にとっての不確 定因子です」
ローマ教王は、この言葉を聞き自らの顎に手を添え思考を始めた。
息苦しくなるほどの沈黙の中、思考を終えたローマ教王が一言つぶやいた。
「神の遺伝子の覚醒・・・・・・人間ではない、すなわち『人』としての完成・・・・・・・・・・・・」
「はい」
「そうか・・・・・・ならば消せ。我々の計画に不確定因子はいらない。コードネーム、アンデレよ、神谷当夜を消す手はずを済ませろ。早急にな」
アンデレと呼ばれた三十代半ば男はただ無言で頷いた。
「以上」
ローマ教王の言葉に皆が一斉に立ち去った。
世界の歯車は当夜たちの知らぬ間に確実に狂い始めていた。
『死』を望まずとも『死』する道へと。