ツインテール探偵くるみの事件簿
夏が来た。日差しを遮るように手のひらをかざしていると頭から大量の水が掛けられ、バケツを被らされた。
「ワトちゃん、びっしょぬれ」
くるみの笑い声がバケツの外で聞こえた。こんなことが許される場所がある。それはプールだ。
部として認められていない俺たちが部室を持てるのには理由がある。それは『誰かがやらなければいけない仕事』をやることだ。
ということで、いつものメンバーでプール開き前の清掃をしているのだ。
「見えるはずのないものが見えるそれが妄想だ」
「ぼんやりですけど見えてきました」
目をつむって話している二人が妄想愛好会の倉田章吾(くらたしょうご)先輩と能登順平(のとじゅんぺい)だ。
「聞こえる」
排水溝に向かってつぶやいているのが超常現象研究会の望月蛍子(もちづきけいこ)さん。この三人は独自の世界をもっている。
「スカートめくっちゃだめ」
くるみにちょっかい出しているのが漫画同好会の部長、坂谷栞(さかやしおり)さん。女性陣では一番のロングヘア。
「いいじゃない。水着きてるんだから。ほらほら」
ちょっとエロオヤジが入ってる。
「みんなまじめに掃除してよ」
彼女は遠矢美咲(とおやみさき)、熱い女だ。望月さんと同じショートヘア。
「きゃっ」
俺の前で転んだのが清原桃果(きよはらももか)。髪型はセミロング。二人とも漫画同好会のメンバーだ。
「大丈夫か?」
手を差し伸べると、
「ありがとっととと」
またすべって俺の胸元に顔面を突っ伏した。
「桃果に抱きついてんじゃない」
俺の顔にホースで水をかけているのが学園内で勝手に探偵事務所を開いている星村くるみ。髪型はツインテール。
「抱きついてねえって」
「透けてるの見て喜んでるくせに」
女子は制服の下に水着を着ている。くるみは泳ぐつもりらしいが無理だろう。
ちなみに俺は渡辺透(わたなべとおる)。くるみはワトちゃんと呼んで勝手に助手にしている。
眉をひそめるクラブばかりなので部室があるプレハブの建物をミステリーハウスと呼ぶ生徒も多い。
作品名:ツインテール探偵くるみの事件簿 作家名:へぼろん