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ツインテール探偵くるみの事件簿

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「一句ひらめいたぞ」
 突然、倉田先輩が言った。くるみを見て、妄想川柳ができたらしい。腕を組んで目をつむっていた。

 『食パンを くわえて走る メイドさん』

「はぁぁ。すばらしい」
 能登が深いため息をついた。
「わかるか?」
「ええ、わかります」
 まったく、わからない。

「透、この句のすばらしさがわからないのか?」
 驚いた顔で能登が訊いた。
「悪いが、教えてくれないか」
「食パンをくわえて走ってるメイドさんを妄想してみろ」
 とりあえず、くるみでしてみた。
「どうだ、朝の情景が浮かんでくるだろ」
「まあ、そうだな。遅刻しそうな感じかな」
「それだよ。寝坊した姿が浮かぶんだ。メイドさんはどんな子だと思う?」
「おっちょこちょいかな」
「そう、ドジッコだ。もう一度この句を詠んでみろ」
「食パンをくわえて走るメイドさん」
「どこにもドジッコが入ってないだろ。だけどドジッコを思い起こさせる句なんだ」
 そこがすばらしいのだと、能登が力説した。
「メイドさんじゃなければいけないのか?」
「わかってないな、透。制服を着た女の子だったら普通すぎるだろ」
「メイド喫茶に遅刻しているってことか?」
「そういうことですよね、倉田先輩」

「残念だけど、もう一歩だ。能登」
「ええっ、どこが足りなかったんですか?」
「メイドさんは遅刻した。だが、それは昼のことだ」
 確かに朝早くからメイド喫茶が開いているというイメージはない。
「どういうことですか?」
「罰ゲームだ」
「遅刻した罰で食パンをくわえて走れと?」
「そうだ。宣伝にもなるからな」
 能登ががっくりとうなだれた。
「まだまだ修行が足りませんでした」
 俺は早々に退散することにした。